【建築】設計図書の保存期間は15年!根拠となる法律から解説します

建築物の設計図書は長年保存しなければいけないものです。この記事では、設計図書の保存期間について、根拠となる法律などから解説をしていきます。保存方法や保存時の注意点についても触れていきます。

設計図書の保存期間

設計図書は法律によって保存義務と保存期間が定められています。

設計図書の保存期間:15年間(作成日から数えて)

この保存義務は建築士法により定められています。

2 前項に定めるもののほか、建築士事務所の開設者は、国土交通省令で定めるところにより、その建築士事務所の業務に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。

建築士法 第二十四条の四 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC1000000202

建築士法施行規則には、保存すべき図書とその保存期間が定められています。

法第二十四条第二項の国土交通省令で定める業務は、次に掲げるものとする。

一 建築物の設計に関する業務
二 建築物の工事監理に関する業務
三 建築工事契約に関する事務に関する業務
四 建築工事の指導監督に関する業務
五 建築物に関する調査又は鑑定に関する業務
六 建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理に関する業務

2 前項各号に掲げる業務に従事したそれぞれの期間は通算することができる。

建築士法施行規則 第二十条の四 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325M50004000038_20211216_503M60000800078

5 建築士事務所の開設者は、法第二十四条の四第二項に規定する図書を作成した日から起算して十五年間当該図書を保存しなければならない。

建築士法施行規則 第二十一条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325M50004000038_20211216_503M60000800078

なお、保存すべき設計図書は、配置図、各階平面図、二面以上の立面図、二面以上の断面図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図、構造計算書その他、工事監理報告書などとされています。ここに記載のない設計図書には明確な保存義務はありませんが、保存がベターといえるでしょう。

4号建築物などにも設計図書の保存義務があります

以前までは4号建築物(木造2階建て)など、建築確認の不要な建築物の設計図書の保存義務はありませんでしたが、建築士法施行規則の改正により保存が義務づけられることになりました。古い体制のまま業務を行っている会社では、4号建築物の設計図書の保存をおざなりにしているケースが稀にあります。改めて現状の保存体制を確認し、社内の保存規定などを整備しておきましょう。

▼4号建築物などへの設計図書への保存が義務化された建築士法施行規則の改正について、詳しく知りたい方は国土交通省のページもご確認ください。

設計図書の保存期間を守らなければどうなる?

設計図書には法律により保存義務と保存期間が定められているため、保存期間を守らずに廃棄してしまったり紛失してしまったりした場合には、罰則があります。

「帳簿や図書を保存しなかったものは30万円以下の罰金」とされているため、設計図書は必ず保存しておきましょう。

建築関係の法令は構造計算偽装事件などの影響を受け、厳しいものへと改正される傾向にあります。もし建築物の構造計算書類などを偽装していると判断された場合、免許取消し、業務停止、戒告、文書注意を受ける可能性があります。刑事事件として有罪判決を受けた場合には懲役刑、罰金刑もあります。万が一偽装などを疑われた場合に設計図書などを提出できないようでは、正しく業務を行ったことを証明できません。そのような事態を避けるためにも、必要な帳簿や設計図書をしっかりと保存できる体制を整えましょう。

設計図書の保存方法

設計図書は原則として紙ベースでの保存を想定して制定されていますが、e-文書法とe-文書法国土交通省令によって電子データでの保存も認められています。設計図書をすべて紙で保存する場合、保存スペースの確保も必要になるため、電子での保存をしている会社も増えてきました。

ここでは、設計図書を紙で保存する場合と、電子データで保存する場合について説明していきます。

紙の設計図書の保存方法

設計図書の保存期間は、作成日から15年間です。建築物ごとに設計図書をまとめて保存することで、過去の設計図書が必要になった際や廃棄の際にまとめて取り出せるため、管理が楽になります。

建築物に関する帳簿の保存期間も15年間となりますが、起算日が事業年度の末日となっており、設計図書とは保存期間が少しだけ異なります。まとめて保存しておく場合は、保存期間の長いほうに合わせて保存しましょう。

なお、営業に関連する図書の保存期間は10年となり、保存期間が異なります。設計図書とまとめて保存しすべてを15年間保存とするか、分けて保存し別々に廃棄するか、どちらかに統一して保存するとよいでしょう。

建築士法に「建築士は設計を行った場合は、その設計図書に建築士である旨の表示をし、「記名」及び「押印」をしなければならない。設計図書の一部を変更した場合も同様とする。」と記載されています。設計図書を保存する際には、建築士の記名か押印が必要となるため、忘れずに行うようにしましょう。

電子データの設計図書の保存方法

電子データで設計図書を保存する場合、e-文書法やe-文書法国土交通省令などのさまざまな規定を守って保存しなければなりません。

電子データでの保存方法には、「紙の設計をスキャナで取り込み電子データにして保存する」方法と、「電子データとして作成し電子データのまま保存する」方法の2通りに分けられます。

どちらの場合も「記名」か「押印」が必要になります。スキャンする場合には、紙の設計図書に「記名」か「押印」がされているかを確認してからスキャンするようにしましょう。電子データで設計図書を作成した場合には、電子署名(タイムスタンプなど)を設定しましょう。

また、設計図書を電子データとして保存するには、すぐに提示できるように保存しなければなりません。設計図書を閲覧したいときにすぐ見つけられるように、フォルダを整理して保存したり、検索機能にて探し出せるようルールを決めて命名する必要があります。

これらは下記の規則にて定められています。

一 作成された電磁的記録を民間事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物(以下「磁気ディスク等」という。)をもって調製するファイルにより保存する方法
二 書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録を民間事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法

2 民間事業者等が、前項の規定に基づく電磁的記録の保存を行う場合は、必要に応じ電磁的記録に記録された事項を、直ちに明瞭な状態で、その使用に係る電子計算機の映像面に表示及び当該事項を記載した書面を作成することができる措置を講じなければならない。

3 別表第一の上欄に掲げる法令の同表の下欄に掲げる規定に基づき、同一内容の書面を二以上の事務所等(当該書面の保存が義務付けられている場所をいう。以下同じ。)に保存をしなければならないとされている民間事業者等が、第一項の規定に基づき、当該二以上の事務所等のうち、一の事務所等に当該書面に係る電磁的記録の保存を行うとともに、当該電磁的記録に記録されている事項を他の事務所等に備え置く電子計算機の映像面に表示及び当該事項を記載した書面を作成することができる措置を講じた場合は、当該他の事務所等に当該書面の保存が行われたものとみなす。

平成十七年国土交通省令第二十六号 国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000800026

▼設計図書の電子データでの保存については、日本文書情報マネジメント協会でもわかりやすい解説をしています。

設計図書の廃棄方法

紙で保存している設計図書も、スキャナ保存したあとの原本となる設計図書も、機密情報が含まれるものです。廃棄する際にも、機密文書としての廃棄処理を行わなければいけません。しかし、設計図書は一般的なシュレッダーには大きすぎる・量が多すぎるなどの理由により、社内では廃棄が難しいものです。廃棄する際には、機密文書専門の廃棄サービスの利用をオススメします。

まとめ

  • 設計図書は、基本的にすべて保存すること
  • 設計図書の保存期間は作成日から15年間
  • 電子データの保存にはさまざまな規定がある
  • 廃棄の際には機密文書廃棄サービスなどを利用する

なお、設計図書の保存場所に困っている場合には書類保管サービスの利用がオススメです。書類保管サービスの倉庫に預けることで、普段使うことのない設計図書に事務所を占領されずに済みます。書類保管サービスの利用は、設計図書の日焼け・汚損や紛失を避けることにも繋がります。

書庫番人の書類保管サービスなら、図面などの大きな設計図書もお預かりが可能です。見積もりは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

書庫番人コラム編集犬

書庫番人コラム編集犬

書類管理・機密文書廃棄などのオススメ方法を中心に皆様のお役立ちコラムを執筆している犬です。コラムを読んでも分からなかったことはお気軽に書庫番人のお問い合わせフォームからお問い合わせください。