人事労務関係の書類をいつまで保存しておくべきかと、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。人事労務の仕事には、さまざまな書類が関わってきます。多くの書類には保存期間が存在します。正しい保存期間を知っておくことで、不要な書類を手放すことができ、スムーズな書類整理ができるでしょう。本記事では、人事労務で頻繁に扱う書類の保存期間と、その注意点やコツをわかりやすく紹介します。ぜひ参考にしてください。
人事労務関係書類とは
人事や労務の業務は、多くの書類と深く関連しています。人事労務関連書類には、社員の詳細な情報や、採用から退職までの一連の過程が記録されています。さらに、会社のルールや制度を具体的に示す人事規定、労働条件、福利厚生に関する内容も含まれているため、非常に幅広い情報が網羅されています。これらの書類は、組織内での円滑な運営を支える重要な役割を果たしています。社員一人一人の成長や動向を正確に把握するためには、詳細な情報の記録が欠かせません。
人事労務関連書類の大まかな分類は以下の通りです。
人事労務関係書類の分類 | 内容 | 主な書類名 |
---|---|---|
人事労務 | 企業の基盤となる人事労務全般に関連する書類 | 労働者名簿、雇用契約書、タイムカードなど |
人事評価 | 従業員の能力や実績を記録・評価する書類 | 身元証明書、休暇届など |
労災保険 | 労働中の事故や災害時の保障を確保するための書類 | 災害補償、請求関連書類など |
雇用保険 | 雇用の安定や適切な労働環境を保持するための書類 | 離職票、被保険者資格取得確認通知書など |
社会保険 | 健康保険や厚生年金関係に関係する重要な書類 | 健康保険、厚生年金の手続き書類、資格喪失確認通知書など |
賃金関係 | 給与や報酬に関連する書類 | 賃金台帳、源泉徴収簿など |
安全・衛生関係 | 職場の安全と従業員の健康を守るための書類 | 安全、衛生委員会の議事録など |
人事労務関係書類の保存義務について
保存すべき人事労務関係書類の保存期間は、主に「労働基準法」「雇用保険法」といった法律に明記されています。その他にも、「厚生年金保険法」「労働者災害補償保険法」「労働保険の保険料の徴収等に関する法律(通称:労働保険徴収法)」「労働者派遣法」といった他の法律でも書類の保存期間が定められている場合もあります。これらの書類は将来のさまざまな場面で必須になってきます。例えば、労働基準監督署の立ち入り調査や労働審判の際に正確な情報や証拠を提供するためには、適切な書類が手元になければいけません。したがって、適切な法律に基づいた保存期間を守りつつ、これらの書類を保存しましょう。
以下に、数ある人事労務関係書類の法律から、一部を紹介します。
事業主及び労働保険事務組合は、雇用保険に関する書類(雇用安定事業又は能力開発事業に関する書類及び徴収法又は労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則による書類を除く。)をその完結の日から二年間(被保険者に関する書類にあつては、四年間)保管しなければならない。
引用:雇用保険法施行規則 第百四十三条
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
引用:引用:労働基準法 百九条
事業主は、健康保険に関する書類を、その完結の日より二年間、保存しなければならない。
引用:健康保険法施行規則 第三十四条
人事労務関係書類の保存期間と起算日一覧
法律により人事労務の書類の中には、特定の期間保存する責任があるものが多数存在します。書類の保存期間は、書類の種類によって異なります。労働契約書や給与明細などの従業員個人の情報を含む書類は、一定の期間保存が必要です。この期間はその書類の起算日から数えられます。
起算日とは、書類を保存しはじめる日を指します。保存義務のある書類には、起算日が決まっています。書類の種類によって起算日が異なるため、注意深くチェックしておきましょう。
各書類の保存期間とその期間を開始する起算日一覧は以下の通りです。
一般的な人事労務関係書類一覧
保存期間 | 書類名 | 起算日 |
---|---|---|
5年 | 従業員の身元保証書 | 作成日 |
5年 | 誓約書など | 作成日 |
5年 | 一般健康診断個人票 | 作成日 |
5年 | 賃金その他労働関係の重要書類(労働時間を記録するタイムカード、残業命令書、残業報告書など) | 賃金支払期日 |
5年 | 労働者名簿 | 完結の日 |
5年 | 賃金台帳(国税通則法では7年保存を義務づけ) | 賃金支払期日 |
5年 | 雇入れ・解雇・退職に関する書類 | 完結の日 |
5年 | 災害補償に関する書類 | 終了日 |
4年 | 雇用保険の被保険者関係書類(雇用保険被保険者資格取得等確認通知書、同転勤届受理通知書、同資格喪失確認通知書{離職証明書の事業主控}など) | 完結の日 |
3年 | 企画業務型裁量労働制の労使委員会記録 | 決議後 |
3年 | 労使委員会議事録 | 開催日 |
3年 | 労災保険関係書類 | 完結の日 |
3年 | 労働保険の徴収・納付等の関係書類 | 完結の日 |
2年 | 雇用保険に関する書類(雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届など) | 完結の日 |
2年 | 健康保険・厚生年金保険関係書類(被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書、標準報酬改定通知書など) | 完結の日 |
特定職の人事労務関係書類一覧
保存期間 | 書類名 | 起算日 |
---|---|---|
30年 | 放射線業務従事者の線量の測定結果記録※当該記録を5年保存したあと、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときは30年ではない場合もある | 作成日 |
30年 | クロム酸等の空気中における濃度の定期測定記 | 作成日 |
30年 | 電離放射線健康診断個人票※当該記録を5年保存したあと、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときは30年ではない場合もある | 作成日 |
30年 | 特別管理物質労働者の特定化学物質健康診断個人票 | 作成日 |
30年 | 特別管理物質についての作業の記録 | 常時従事開始日 |
7年 | 粉じん濃度の測定記録測定結果の評価記録 | 作成日 |
7年 | じん肺健康診断記録じん肺健康診断に係るエックス線写真 | 作成日 |
5年 | 有機溶剤等健康診断個人票 | 作成日 |
5年 | 鉛健康診断個人票 | 作成日 |
5年 | 四アルキル鉛健康診断個人票 | 作成日 |
5年 | 特定化学物質健康診断個人票 | 作成日 |
5年 | 高気圧業務健康診断個人票 | 作成日 |
※起算日の項目に「完結の日」という表記が存在します。この「完結の日」とは退職、解雇、死亡の日を示します。保存の必要な書類を整理する際には、それぞれの起算日を確認しましょう。
人事労務関係書類を保存する際の注意点
書類管理を正確に行うことで、企業のリスクを大きく減らせます。特に、人事労務の書類管理はその重要性が高まっています。どのようにして安全かつ適切に書類を管理すればよいのか、具体的なポイントや注意点を押さえておきましょう。
永久保存したほうがよい書類
特定の書類は、会社が解散するまでの長期間、保存することが推奨されています。具体的には、就業規則、従業員の労務、給与、社会保険関連、懲戒、労働協約、そして定款や規定関係の書類が該当します。しかし永久保存となると、紙の書類の保存は場所やコストが気になります。書類の保存方法は、2005年施行のe-文書法により、電子化が可能になりました。電子保存は場所も取らず、コスト効率もよいため、管理も容易です。電子化することで場所やコストの心配が減り、さらに管理も楽になります。もちろん、紙の書類のまま専門の書類保管サービスを活用するのもオススメです。自社のニーズに応じて最適な方法を選びましょう。
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保存義務のない人事労務関係書類
人事労務関係書類の中には、保存義務が求められない書類もあります。保存義務のない書類については、企業ごとに自由に保存や廃棄の判断が可能です。しかし、保存を重ねると書類が大量になるため、月や四半期ごとの定期的な廃棄をオススメします。
保存期間を過ぎた人事労務関係書類を廃棄する
保存期間が過ぎた書類は、廃棄が基本です。限られた保存スペースを有効活用するため、保存期間が切れた書類は早期に整理しましょう。廃棄の際には、特にマイナンバーが含まれる書類に注意しましょう。例えば、扶養控除等申告書は保存期間が終了したら速やかに処分することが義務付けられています。
参考:国税庁 源泉徴収事務・法定調書作成事務におけるマイナンバー制度
書類の廃棄は、情報漏洩の対策が大切です。個人情報が第三者の手に渡るリスクを避けるため、書類をシュレッダーで細かく処理したり専門の書類廃棄サービスを利用したりしましょう。
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個人情報保護のために
人事労務の書類には、従業員の個人情報が多く含まれています。これらの情報の取り扱いには十分な注意が必要です。適切な場所で安全に保存し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えましょう。
紙の書類の場合
限定された人のみがアクセスできる保存場所にすることがオススメです。鍵付きの棚や専用の保存部屋、さらにはセキュリティ強化の環境での保存を心がけるとよいでしょう。保存する際には、同じ保存期間の書類をまとめて保存しておくと整理や廃棄がしやすくなります。しかし、多くの人事労務関係書類は起算日が異なっているため、間違えないように注意しましょう。起算日が特殊な書類は個別に管理するなどの工夫をするとよいでしょう。
デジタルデータの場合
デジタルデータの人事労務関係書類も安全管理が不可欠です。閲覧権限を制限したり、必要な場合はパスワードを設定したりするなど、不要なアクセスを避ける対策をしましょう。
「書庫番人」の書類保管サービスがオススメ
人事労務関係書類の保存に困っているなら、「書庫番人」の書類保管サービスに任せるのがオススメです。人事労務関係書類だけでなく、他のさまざまな書類も一括管理できます。書庫番人は書類の保存・分類・Web管理・紙の書類の電子化・電子契約サービス(クラウドサイン)との連携など書類全般の幅広いサービスを提供しています。また、書類の保存から廃棄までの手続きもスムーズに進められます。書庫番人なら、お悩み相談やオプション料金でお客様のところに訪問して書類の分類の手伝いなども行っています。はじめての方でも、安全かつ手軽に書類保管サービスを活用できます。
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