社会保険の手続きで作成した書類は、提出したあとも一定期間、手元に保管しておかなければなりません。その保存期間は、健康保険・厚生年金保険が2年、雇用保険が2年または4年、労災保険が3年と制度ごとに異なるため、どの書類をいつまで残せばよいか迷う担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、社会保険の書類保管が必要な理由と書類ごとの保存期間を整理したうえで、効率的な保管方法、保存期間を過ぎた書類の廃棄手順まで解説します。期限前に誤って処分したり、不要な書類を溜め込んだりしないためにも、正しい管理のルールを押さえておきましょう。

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社会保険の書類保管が必要な理由
社会保険の書類保管は法令で義務付けられている
社会保険の手続きで作成した書類は、年金事務所やハローワークに提出すれば終わりではなく、手元に残る控えや関係書類にも法令で保存期間が定められています。例えば健康保険法施行規則第34条は、健康保険に関する書類を完結の日から2年間保存するよう事業主に義務付けており、厚生年金保険・雇用保険・労災保険についても、それぞれの施行規則に同様の規定があります。つまり書類の保管は「念のため残しておく」任意の作業ではなく、事業主が果たすべき法的な義務です。総務や労務の担当者だけでなく、経営者や管理職もこの前提を理解しておく必要があります。
年金事務所の調査や従業員からの問い合わせに備える
保存した書類が役立つ場面は、大きく3つあります。1つ目は行政による調査です。厚生年金保険法第100条では、被保険者の資格、標準報酬、保険料などの決定に関して必要があるとき、事業主に書類の提出を命じたり、職員が事業所に立ち入って帳簿や書類を検査したりできると定めています。このとき書類がそろっていなければ、手続きを正しく行っていたことを示せません。
2つ目は従業員や元従業員からの問い合わせです。「いつから社会保険に加入していたのか」「退職時の手続きはどうなっていたのか」と聞かれても、控えがすぐに見つかれば正確に回答できます。反対に書類が見つからなければ、会社への信頼を損ねかねません。
3つ目は社内での確認や訂正です。書類の控えは、届け出た報酬額や加入日が給与や勤務実態と一致していたかを確かめる材料になります。手続きの誤りに気づいたときも、控えが残っていれば訂正をスムーズに進められるでしょう。 なお、厚生年金保険法第92条では、保険料を徴収する権利の時効を2年と定めています。調査で届出内容に誤りが見つかれば、時効の範囲内でさかのぼって保険料の納付や届出の訂正を求められることもあるため、控えがそろっているかどうかで対応のしやすさが大きく変わります。
社会保険の書類の種類と保存期間
健康保険・厚生年金保険に関する書類の保存期間は2年
健康保険と厚生年金保険に関する書類は、どちらも保存期間が2年です。対象となるのは、入社・退職時に提出する被保険者資格取得届・資格喪失届、毎年提出する算定基礎届、給与が大きく変わったときの月額変更届、賞与を支給したときの賞与支払届、扶養家族が増減したときの被扶養者(異動)届などの控えや関係書類です。協会けんぽに加入している事業所では、これらの届出の多くを健康保険・厚生年金保険共通の1枚の様式で行います。一方、健康保険組合に加入している場合は健康保険の届出を組合へ別に提出するため、控えの保管先が分かれやすい点に注意しましょう。いずれの場合も保存期間は同じ2年なため、健康保険と厚生年金保険の書類は同じファイルにまとめて管理しても問題は起きにくいでしょう。電子申請で手続きした場合も、送信した届出のデータや行政から届く通知書は、紙の書類と同じく保存対象として扱っておくと安心です。
参照:健康保険法施行規則 | e-Gov 法令検索
参照:厚生年金保険法施行規則 | e-Gov 法令検索
雇用保険に関する書類の保存期間は2年または4年
雇用保険に関する書類の保存期間は原則2年ですが、被保険者に関する書類は4年と長く設定されています。社会保険の書類をまとめて「2年で廃棄」とルール化すると、雇用保険の被保険者に関する書類まで期限前に処分してしまうおそれがあります。雇用保険の書類は別のファイルに分け、保存期間を個別に管理するのが安全です。どの書類が「被保険者に関する書類」にあたるか判断に迷う場合は、4年保存に合わせるか、管轄のハローワークに確認するとよいでしょう。なお、労働保険料の申告書など徴収法にもとづく書類と、助成金などの雇用安定事業・能力開発事業に関する書類は、この規定の対象外です。
労災保険に関する書類の保存期間は3年
労災保険も、雇用保険と同じく広い意味での社会保険に含まれます。労災保険に関する書類は、完結の日から3年間の保存が必要です。健康保険・厚生年金保険の2年とも、雇用保険の2年・4年とも異なるため、労災関係の書類も独立したファイルで管理すると迷わずに済みます。こちらも徴収法にもとづく書類は対象外で、労働保険の概算・確定保険料申告書などは、徴収法施行規則第72条により完結の日から3年間保存しなければなりません。
参照:労働者災害補償保険法施行規則 | e-Gov 法令検索
参照:労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則 | e-Gov 法令検索
社会保険書類の保存期間は「完結の日」から数える
ここまで紹介した保存期間は、いずれも「完結の日」から数えることになっています。ただし、各施行規則には「完結の日」の定義が置かれていません。書類を作成した日や提出した日が、そのまま起算日になるとは限らない点に注意が必要です。判断に迷う書類は、より遅い日付を起算日として扱うなど社内でルールを統一しておくと、早すぎる廃棄を防げます。
整理した保存期間は、次のとおりです。
| 書類の種類 | 保存期間 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 健康保険に関する書類 | 2年 | 健康保険法施行規則 第34条 |
| 厚生年金保険に関する書類 | 2年 | 厚生年金保険法施行規則 第28条 |
| 雇用保険に関する書類 | 2年(被保険者に関する書類は4年) | 雇用保険法施行規則 第143条 |
| 労災保険に関する書類 | 3年 | 労働者災害補償保険法施行規則 第51条 |
| 労働保険の徴収・納付に関する書類 | 3年 | 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則 第72条 |
関連記事:社会保険に関する書類の保存期間を守るための必須ガイド
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社会保険の書類を効率よく管理する保管方法
社会保険の書類は種類別・年度別に分けて保管する
社会保険の書類を効率よく管理する第一歩は、保存期間ごとにファイルを分けることです。まず「健康保険・厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の3つに分け、雇用保険はさらに被保険者に関する書類(4年)とそれ以外の書類(2年)に分けます。そのうえで年度ごとに区切っておけば、廃棄の時期がそろって整理しやすくなります。あわせて、在籍中の従業員と退職者の書類も分けておきましょう。退職者の書類は参照される機会こそ減りますが、元従業員からの問い合わせや行政の調査で必要になることがあります。退職年度ごとにまとめておけば、必要なときにすぐ取り出せます。紙の書類は、ファイルを保存箱にまとめ、箱の側面に「書類の種類」「対象年度」「保存期限」を記したラベルを貼っておくと、倉庫や書庫に移したあとでも中身をすぐに把握できて便利です。
保存期間と廃棄予定日を管理台帳で把握する
ファイルを分けただけでは、いつ廃棄してよいかが一目でわかりません。そこで、ファイルの背表紙に保存期限を書き込み、あわせて書類の種類・保管場所・保存期限・廃棄予定日を一覧にした管理台帳を用意しておきます。台帳には、保管場所の棚番号、担当者名、書類の持ち出し日・返却日も記録しておくとよいでしょう。誰がいつ書類を扱ったかがわかれば、紛失時にも原因を追いやすくなります。Excelなどの表計算ソフトで作成すれば、期限が近い書類を並べ替えや絞り込みで簡単に洗い出せます。年度末など時期を決めて年に1回台帳を見直す習慣をつけると期限前の誤廃棄や、期限切れ書類の溜め込みを防ぐうえで効果的です。
個人情報を含む社会保険書類は施錠して保管する
社会保険の書類には、氏名、生年月日、住所、給与額、扶養家族の情報など、従業員の個人情報が数多く記載されています。マイナンバーが記載された書類もあるため、取り扱いには特に注意が必要です。番号法第20条は、法律で認められた場合を除き、他人のマイナンバーを含む特定個人情報を収集・保管することを禁じています。必要がなくなった書類を漫然と残し続けるのは避けなければなりません。保管場所は鍵付きのキャビネットや書庫とし、鍵を管理する人と閲覧できる人を限定しましょう。
担当者が1人で管理していると、異動や退職のたびに書類の所在がわからなくなりがちです。管理台帳を使って、複数人で保管状況を共有しておくと安心です。また、書類を机の上に出しっぱなしにしない、コピーを必要以上に作らないなどの日常の取り扱いルールも、社内で決めておきましょう。
参照:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 | e-Gov 法令検索
保管方法の選択肢|社内保管・外部保管・電子化
社会保険の書類の保管場所は、大きく社内保管・外部保管・電子化の3つに分けられます。それぞれ向き不向きがあるため、書類の参照頻度や保存期間に応じて使い分けるのが現実的です。
| 保管方法 | ◯メリット | ✕デメリット | 向いている書類 |
|---|---|---|---|
| 社内保管(キャビネット・書庫) | すぐに取り出せる/追加費用がかからない | スペースを圧迫する/施錠や鍵の管理を自社で行う必要がある | 在籍者の書類や直近年度の書類など、参照頻度が高いもの |
| 外部保管(書類保管サービス) | オフィスのスペースを確保できる/セキュリティ体制の整った施設で保管できる | 保管料や取り寄せの費用がかかる/取り出しまでに時間がかかる | 退職者の書類や過去年度分など、参照頻度は低いが保存期間内のもの |
| 電子化(電子申請・スキャン保存) | キーワードで検索できる/保管スペースが不要になる | バックアップやアクセス権限の管理が必要/スキャン作業の手間がかかる | 電子申請の控えや、これから発生する書類 |
例えば、在籍者の書類と直近年度分は社内で保管し、退職者の書類や過去年度分は外部の書類保管サービスに預けるなどの組み合わせも可能です。参照頻度の低い過去分だけを社外に移せば、オフィスの省スペース化と安全な保管を両立しやすくなります。外部の保管サービスを選ぶ際は、施設のセキュリティ体制に加え、保存期間を過ぎた書類の廃棄まで任せられるかも確認しておきましょう。
電子化による社会保険書類の保管も検討する
紙の書類が増え続けるなら、電子化も選択肢になります。e-文書法第3条により、法令で書面での保存が求められる書類のうち主務省令で定めるものは、電磁的記録での保存が可能です。厚生労働省所管の法令に関しては同省の省令第4条が保存方法を定めており、パソコンで作成したデータをそのまま保存する方法と、紙の書類をスキャナで読み取って保存する方法のどちらも認められています。ただし、必要に応じてすぐに画面に表示したり、書面として出力したりできる状態にしておくことが条件です。
データの消失や不正アクセスに備えて、バックアップの取得やフォルダごとのアクセス権限の設定も欠かせません。電子化を進める際は、対象の書類が電子保存の対象に含まれるかを事前に確認し、ファイル名の付け方や保存先のフォルダ構成まで決めておくと運用が安定します。
電子申請で届く書類の保存にも注意が必要です。資本金1億円超の法人など「特定の法人」は、2020年4月以降に開始する事業年度から、算定基礎届・月額変更届・賞与支払届などを電子申請で提出しなければなりません。e-Govの電子申請で届く通知書(電子公文書)には取得期限があり、例えば雇用保険関係では通知から90日を過ぎるとダウンロードできなくなります。電子申請を利用している場合は、通知書を期限内にダウンロードし、紙の控えと同じルールで保存先と保存期間を決めておきましょう。
参照:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律 | e-Gov 法令検索
参照:厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令 | e-Gov 法令検索
参照:2020年4月から特定の法人について電子申請の義務化が始まっています | 日本年金機構
参照:e-Govの取得期限(通知後90日)が経過し、公文書のダウンロードが出来なくなった場合 | 群馬労働局
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保存期間を過ぎた社会保険書類の廃棄方法
保存期間を過ぎた社会保険書類は復元できない方法で廃棄する
保存期間を過ぎた書類を、一般ごみとしてそのまま捨ててはいけません。個人情報が外部に漏れないよう、シュレッダーで細断するか、溶解処理を行う専門業者に依頼するなど、内容を復元できない方法で処分します。特にマイナンバーが記載された書類は、法定の保存期間を過ぎたら、できるだけ速やかに復元できない手段で廃棄することが求められています。専門業者に依頼する場合は、処理の完了を証明する書類を発行してもらえるかも確認しておくと、廃棄の記録として残せて安心です。廃棄した日付と書類の内容を管理台帳に記録しておけば、あとから「あの書類はどうなったのか」と確認されたときにも説明できます。保管から廃棄までを一連の流れとして管理することが、社会保険の書類を安全に扱うための基本です。
参照:特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編) | 個人情報保護委員会
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法定期間より長く残したい書類の考え方
法令で定められた保存期間は、事業主が最低限保管しなければならない期間です。元従業員から加入期間について問い合わせを受けることもあるため、資格取得届・資格喪失届の控えなどを法定期間より長く残す会社もあります。ただし、マイナンバーが記載された書類は、番号法第20条により、法律で認められた範囲を超えて保管できません。保存期間を過ぎても書類を残したい場合は、マイナンバーの部分を復元できない程度にマスキングまたは削除したうえで保管を続ける方法があります。マスキング後の書類にも個人情報は含まれるため、利用する必要がなくなった時点で廃棄しましょう。どの書類を何年残すかは管理台帳に記載し、社内ルールとして明文化しておくと、担当者ごとの判断のぶれを防げます。また、賃金台帳や労働者名簿など、社会保険の書類と一緒に管理されやすい労働基準法上の書類は保存期間が5年(当分の間は3年)と異なるため、あわせて確認しておくと安心です。
参照:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 | e-Gov 法令検索
参照:特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編) | 個人情報保護委員会
参照:労働基準法 | e-Gov 法令検索
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