企業で、従業員の情報を適切に保管、管理することは、法的な要件を満たすだけでなく、業務の効率化にも繋がります。しかし、人事書類の保管方法を誤ると、情報漏洩や業務の混乱を招く可能性があります。この記事では、人事書類の基本的な分類から、適切な保管方法や管理術、さらには効率的な管理ツールまで、実践的なガイドをお届けします。人事業務をスムーズに進めるために、ぜひ参考にしてください。
人事書類とは?まずは基本を理解しよう
人事書類とは、企業が人材を適切に管理するために必要な書類のことであり、従業員との雇用関係を適切に維持し、良好な労働環境を整えるうえで欠かせない書類です。これらの書類は、人事や労務に関する業務を円滑に行うために必要な情報や手続きを記録・管理する重要な資料となります。
代表的な人事書類一覧
人事書類は、大きく分けて以下のカテゴリーに分類されます。
カテゴリー | 主な書類 | 用途 |
---|---|---|
人事労務全般 | ・労働者名簿 ・雇用契約書 ・出勤簿(タイムカード) ・36協定関連書類 ・休暇届 | 雇用関係の基本事項や労働時間の管理に使用 |
人事評価関連 | ・身元証明書 ・人事考課表 ・面談記録 | 従業員の評価、キャリア管理、休暇管理に使用 |
労災保険関係 | ・災害保障関連書類 ・労災保険給付請求書類 | 業務上の災害に対する補償関連で使用 |
雇用保険関係 | ・雇用保険被保険者資格取得確認通知書 ・離職票 | 雇用保険の加入・脱退手続きに使用 |
社会保険関係 | ・健康保険 ・厚生年金保険資格取得確認通知書 ・被保険者標準報酬決定通知書 ・資格喪失確認通知書 | 健康保険・厚生年金の手続きに使用 |
賃金関係 | ・賃金台帳 ・源泉徴収簿 ・給与明細書 | 給与計算や税務処理に使用 |
安全・衛生関係 | ・安全衛生委員会議事録 ・健康診断個人票 | 従業員の安全と健康管理に使用 |
なぜ人事書類の保管が重要なのか
人事書類を適切に保管することが重要なのは、次のような理由からです。
1.法的要件への対応
多くの人事書類には、法律で定められた保存期間があります。これらの規定を守ることは、企業が法令を遵守するうえで欠かせない取り組みです。
2.トラブルの防止と解決
従業員との間で、労働条件や給与などに関するトラブルが発生した際、きちんと保管された書類は重要な証拠として役立ちます。
3.監査や調査への対応
労働基準監督署や年金事務所などの調査が入った場合でも、必要な書類をすぐに提出できれば、スムーズに対応することができます。
4.業務の効率化
必要な情報をすぐに取り出せる環境が整っていれば、日々の人事業務も効率的に進めることができます。
5.企業の信頼性向上
書類を正しく管理することで、企業としての信頼性やガバナンスの質を高めることができます。
人事書類の適切な保管方法とは
紙媒体での保管の注意点
1.セキュリティ対策
- 施錠できるキャビネットやロッカーを使用します。
- 書類保管エリアにはカードキーや入退室記録などを活用し、アクセス制限を設けます。
- 重要な書類は、耐火性・耐水性のある金庫で保管します。
2.保管環境の整備
- 直射日光や湿気を避け、適切な温度と湿度を保ちます。
- 防虫や防カビの対策を行います。
- 定期的に清掃や点検を実施し、保管環境を整えます。
3.書類の劣化防止
- 酸性紙の使用は避け、長期保存には中性紙やアーカイブ用の保存用紙を使用します。
- クリップやホチキスなどの金属部分は、錆の原因となるため、プラスチック製のものに取り替えます。
- 重要な書類は、ラミネート加工や専用の保存袋を利用します。
4.災害対策
- 水害や火災のリスクが低い場所に書庫を設置します。
- BCP(事業継続計画)に、書類保管に関する対策を組み込みます。
ファイリングとキャビネット整理術
1.分類方法の確立
- 「大分類(部門別、書類の種類別など)→中分類(年度別、社員別など)→小分類(月別、項目別など)」という階層構造をつくります。
- インデックスやラベルを活用して、見やすさや探しやすさを向上させましょう。
2.ファイリングシステムの構築
- 書類の特性に合わせて、バインダー式、フォルダ式、個別フォルダ式など、適したファイリング方法を選びます。
- 背表紙やファイルの色を使い分けることで、書類の種類や重要度が一目で分かるようにします。
3.キャビネット配置の工夫
- よく使う書類は、手が届きやすい場所に収納します。
- 書類の重要度や保管期間に応じて、ゾーニング(エリア分け)を行います。
- キャビネットの配置図を作成しておくことで、必要な書類の場所をすぐに把握できるようにします。
4.定期的な整理と棚卸し
- 月ごとや四半期ごとに整理の時間を設けて、書類が乱れるのを防ぎます。
- 年に1回は棚卸しを実施し、不要な書類の廃棄や再分類を行いましょう。
- 整理後の状態を写真で記録し、理想的な状態をチーム内で共有します。
外部保管や電子化でのリスク分散
1.物理的な外部保管でのリスク分散
- 災害リスクを分散するため、遠隔地への保管も検討しましょう。
- 保管には、防火・防水機能がある保管庫や書類保管サービスの使用をオススメします。
2.電子化とバックアップ
- 紙の書類をスキャンし、電子データとして保存します。
- OCR(光学文字認識)技術を活用することで、検索可能な電子文書に変換できます。
- バックアップは定期的に行い、スケジュールを設定して自動化すると効率的です。
3.電子書類のクラウドストレージなどへの保管の検討
- ローカル保管とクラウドストレージ・文書管理システムの利用のリスクを比較し検討します。(自社サーバとサービスの安全性の比較)
- データの転送時と保存時には、暗号化技術を用いて安全性を高めます。
- 複数のサービスを併用することで、さらなるリスク分散が可能です。
人事書類保管の効率化|ラクに管理するための方法
種類も量も多い人事書類は、管理台帳を作って管理すべきと言えます。とくに紙媒体で書類を保管している場合には必須です。電子化した場合も、保管から廃棄までのサイクルを把握するために、管理台帳は必要になります。ただし、文書管理システムなどで保管している場合はシステムが管理台帳として機能する場合もあり、その場合は不要です。
Excel・スプレッドシートの活用例
一般的に、紙媒体や電子化した書類を自社サーバで保管している場合には、Excelなどの計算ソフトを使って書類管理台帳を運用します。
1.書類管理台帳の作成
- 書類名、保管場所、保管開始日、保管期限、廃棄予定日などの項目を設定します。
- フィルター機能を活用することで、廃棄時期が近づいている書類を簡単に抽出できるようにします。
- 条件付き書式を使って、保管期限が近い書類に視覚的な警告を表示し、注意を促します。
2.従業員情報の一元管理
- 社員IDなどをキーとして、関連する書類とリンクを構築します。
- ピボットテーブルを利用することで、部署別や書類の種類別にデータを集計できます。
- データ検証機能を使い、入力ミスを未然に防ぐことができます。
3.アクセス権限の設定
- パスワード保護や共有制限を設定し、許可されていない閲覧や編集を防止します。
- シートの保護機能を利用して、大切な計算式や設定が誤って変更されないようにします。
- 変更履歴を記録することで、誰が・いつ・何を変更したかを確認できるようにします。
4.自動化機能の活用
- マクロやVBAを活用し、繰り返し行う業務を自動化します。
- LOOKUP関数などの関数を使って、データの参照作業を効率化します。
- Googleスプレッドシートのフォーム機能を使うことで、データの収集作業を自動化できます。
クラウドストレージサービス・文書管理システムの導入
クラウドストレージ(Googleクラウドなど)や文書管理システムを使用する場合は、書類管理台帳が不要になります。さまざまな機能があり便利ですが、コストがかかるため、導入には事前の検討が必要です。そこで、ここでは主な機能と注意点を紹介します。
1.クラウドストレージサービスの主な機能
- 場所や端末を問わず、どこからでもデータにアクセスできます。
- 複数の担当者による同時編集や共有がスムーズに行えます。
- 保管スペースに制限がなく、大量の書類を管理できます。
2.文書管理システムの主な機能
- 文書の検索性が向上します(全文検索やメタデータによる検索が可能です)。
- バージョン管理機能により、改訂履歴を残すことができます。
- ワークフロー機能によって、承認プロセスを電子化できます。
- 文書の保管期限を管理し、期限が近づくと自動でアラートを出せます。
3.導入時の注意点
- 自社の情報セキュリティポリシーとシステムの整合性を確認しましょう。
- 従業員への教育と、操作マニュアルの整備が必要です。
- 既存の書類をどのように移行するか、計画を立てておきましょう。
- 万が一システム障害が発生した場合の対応策も、事前に準備しておくことが大切です。
4.コスト比較と費用対効果
- 初期導入費用と、運用にかかる継続的なコストを算出しましょう。
- 紙での保管にかかる費用(保管スペース、人件費、消耗品など)と比較することが重要です。
- 業務の効率化によって得られるROI(投資対効果)も試算しておきましょう。
- 一度に全てを導入するのではなく、段階的な導入を検討することで、リスクを分散できます。
人事業務の効率化には書類保管サービスもオススメ
書類保管サービスとは、企業や個人が保管する必要がある紙の書類を、専門の施設で安全に預かり、管理してくれるサービスです。人事関連の書類が膨大で管理に悩んでいる企業にとって、専門の書類保管サービスは、革新的な解決策となります。企業が直面する主な課題は、限られたオフィススペースの有効活用と、厳格な情報セキュリティの確保です。書類保管サービスを利用すれば、これらの課題に対して総合的な対応が可能です。過去の書類から最新の重要書類まで、セキュリティ対策が整った専用施設で安全に保管できます。
書類保管サービスのメリットは、単なる保管場所の確保にとどまりません。以下のようなメリットがあります。
- 書類管理にかかるコストの削減
- 高度なセキュリティ環境による書類の保護
- 必要なときに迅速に書類を検索・取り出せる仕組み
- 災害や事故による書類紛失リスクの軽減
特に、古い人事記録や現在使用していない書類を長期間安全に保管したい場合に、効果的です。法的要件にも対応した適切な保管方法を提供してくれるため、人事業務の管理負担を大きく軽減できます。デコンプライアンスの強化や情報管理の効率化、リスクの軽減など、さまざまな面で企業にもたらすメリットは大きいのです。
人事書類の保管は「書庫番人」の書類保管サービスにおまかせ
人事書類は、個人情報の塊であり、厳重な管理が求められる重要書類です。「書庫番人」では、そんな人事書類を安心・安全に保管できる環境をご用意しています。耐震性に優れた専用倉庫での厳格な保管体制、24時間監視のセキュリティ体制により、万が一の災害や盗難からも大切な情報を守ります。また、書類の出し入れもWEBで簡単に指示でき、必要なときには迅速に取り寄せが可能。長期保管が必要な雇用契約書や勤怠記録なども、スペースを気にせず効率的に管理できます。ぜひ「書庫番人」を活用してみませんか?
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