BCP対策の基本とは?導入時に意識すべきポイントを徹底解説

自然災害から感染症、サイバー攻撃まで、企業を取り巻くリスクが多様化する中、事業継続計画(BCP)の策定が経営の必須条件となっています。本記事では、BCPと防災対策の違いから策定の5つのステップ、導入時の注意点まで、効果的なBCP対策の全体像を解説します。大企業だけでなく中小企業にとっても重要性が高まるBCP対策の基本を押さえ、いざというときにも事業を守るための知識を身につけましょう。

BCP対策とは?

BCPは日本語で「事業継続計画」を意味します。これは企業が非常事態に見舞われた際も、事業の中断を最小限に抑え、迅速に通常運営に復帰するための戦略的な計画です。言わば企業の「危機対応の設計図」といえるでしょう。想定される危機は自然災害(地震・洪水など)だけでなく、情報漏洩、システム障害、感染症流行などのさまざまな脅威を含みます。

防災対策とBCPの違い

勘違いしやすい言葉に、防災対策があります。防災対策は主に「災害による被害を防ぐこと」に焦点を当てる取り組みで、人命保護と物的損害の軽減が中心です。一方、BCPは「被災後も事業を継続する方法」を計画するものです。防災が「被害の予防と軽減」を目指すのに対し、BCPは「被災後の事業維持と早期復旧」を重視します。例えば、防災は避難訓練や耐震補強などの事前準備が中心ですが、BCPは代替施設の確保や業務の優先順位付けなど、被災後の事業継続に必要な手段を事前に準備します。両者は相互補完的な関係にあり、効果的なリスク管理には両方の視点が必要です。

BCP対策が企業経営の必須条件となった背景

自然災害による企業活動への影響

日本では毎年のように大規模な自然災害が発生しています。2023年7月の東北豪雨や2024年1月の能登半島地震(震度7)など、企業活動に深刻な打撃を与える災害が相次いでいます。これらの自然災害は、建物や設備など物理的な施設の損壊にとどまらず、原材料の調達や製品の配送などサプライチェーン全体の寸断も引き起こし、直接被災していない遠隔地の企業にも甚大な影響を及ぼしています。

内閣府の調査によれば、BCP策定企業は大企業で76.4%、中堅企業でも45.5%に達しており、未策定の企業の多くもその必要性を認識し、具体的な策定を検討中です。こうした動きの背景には、気候変動の影響もあり自然災害の頻発化と被害規模の拡大が、BCPを単なる危機管理の一部ではなく、企業が持続的に成長するための経営の必須条件へと押し上げている現状があります。

参考:内閣府|令和 5 年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査

感染症や情報セキュリティなど多様化するリスク要因

自然災害以外にも、企業経営を脅かすリスクは多様化しています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、事業継続の重要性を改めて浮き彫りにしました。また、サイバー攻撃による情報漏洩、国際紛争による物流混乱、テロなど、予測困難なリスクが増加しています。従来の個別対応(地震対策、感染症対策など)では限界があり、包括的な事業継続の視点からリスク管理を行うBCPの必要性が高まっています。さまざまなリスクに共通する「事業を継続するための方策」をあらかじめ計画することが、企業存続の鍵となっているのです。重要業務の特定と優先順位付け、代替手段の確保など、危機に備えた準備が企業の回復力を高めます。

特定業種のBCP義務化の動き

介護施設・事業所で2024年4月からBCP策定が義務化されました。これは2021年の介護報酬改定で決定し、3年間の経過措置ののちに本格実施となりました。厚労省は「感染症編」「自然災害編」のガイドラインを公開してサポートしています。罰則規定はないですが、安全配慮義務を果たしていないとみなされるリスクがあります。今後他業種でも同様の動きが広がる可能性があります。

参考:厚生労働省|介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

BCP対策の主要目的

重要業務の早期復旧による事業継続の確保

BCPの最大の目的は、災害や事故などの緊急事態発生時に中核となる事業の継続または早期復旧を可能にすることです。事業中断による損失を最小限に抑え、顧客への製品・サービス提供を維持することで、企業の生存と競争力を守ります。これにより企業の存続が確保されるだけでなく、緊急時でも慌てることなく対処できる体制が整うため、リスク回避や損失軽減にもつながります。平常時から緊急対応の手順を整備しておくことで、従業員の安全確保や企業としての社会的責任も果たせるでしょう。特に中小企業は経営資源が限られているため、緊急事態の影響を受けやすく、対応の遅れが事業縮小や倒産につながるリスクが高いです。そのため、どの業務を優先的に継続・復旧させるかを明確化し、限られたリソースで効率的に事業を再開できる計画が重要となります。これにより取引先やステークホルダーからの信頼維持にもつながるのです。

ステークホルダーからの信頼維持と向上

ステークホルダーとは、企業や組織の活動に直接的または間接的に影響を受ける利害関係者(顧客、取引先、投資家など)のことです。災害時でも事業継続できる企業は取引先からの信用度が上がり、新規ビジネスチャンスの獲得につながります。消費者からも安定したサービス提供への信頼感を得られます。特にサプライチェーンの一部を担う企業では、BCP対策の有無が取引継続や新規契約獲得の決め手となることも多いです。投資家からも企業価値を高める要素として評価されます。

考慮すべき3つの主要リスク

BCPの対策では、まず自社の事業継続を脅かす可能性のあるリスクを把握することが大切です。これらのリスクそれぞれに対応したマニュアルを作り、全社で共有しておくことで、いざというときに混乱を減らし、スムーズな対応ができるようになります。

自然災害リスク

地震、台風、洪水、大雪などの自然の脅威があります。日本は特に災害が多い国なため、避難方法や安否確認の仕組み、建物や設備の被害確認方法などを事前に決めておくことが大切です。バックアップ拠点の準備や重要データの保管方法も考えておくことが必要です。

外部要因リスク

会社の外から来る脅威です。取引先の倒産、サイバー攻撃によるシステム停止、情報漏洩、感染症の流行などが含まれます。特にサイバー攻撃は近年増えているため、データのバックアップ方法や復旧手順、代替システムの準備などを考えておく必要があります。取引先には複数の仕入れ先を確保するなどの対策も重要です。

内部要因リスク

会社の内部で起こる問題です。従業員の人為的ミス、設備の故障、不祥事などが該当します。これらは会社の信用を傷つけ、事業継続を難しくする要因になります。不祥事が起きたときの対応手順や、人手不足になった場合の優先業務の決め方などをあらかじめ考えておくことが大切です。

効果的なBCP策定の5つのステップ

基本方針と中核事業の特定

まずはBCP対策の目的を明確にして、自社の中核となる大切な事業を特定します。災害時に限られた人員や設備で優先的に復旧すべき事業を決めておきます。例えば、売り上げが大きい事業や、止まると大きな損失が出る事業などが優先されます。

リスクと被害の想定

自然災害、取引先の倒産、情報漏洩など、考えられるリスクを洗い出し、それぞれがどのような被害をもたらすか具体的に想定します。被害の大きさによって対策の優先順位も変わってきます。

復旧目標時間の設定

各事業がどれくらいの期間止まっても大丈夫なのかを考え、復旧させるべき目標時間を決めます。取引先と話し合って、相手が許容できる時間も確認しておくと安心です。

具体的な対応策の決定

実際に災害が起きたときの初動対応、指示系統、代替手段などを具体的に決めておきます。誰がなにをするのか、どこに連絡するのかなどの細かい部分まで決めておくことが重要です。

計画の書類化と共有

決めたことをマニュアルとして書類化し、社内で共有します。緊急時にすぐ確認できるよう、シンプルでわかりやすい形にまとめておきます。デジタル形式と紙の両方で用意しておくと安心です。

BCP対策を行う際の注意点やポイント

実行可能な計画づくりを心がける

BCP対策は実際に使えるものでなければ意味がありません。自社の状況に合わない計画や、理想的すぎる内容では緊急時に機能しません。

社内の人員や設備、資金などの実情を踏まえて、本当に実行できる計画を作ることが大切です。他社の計画をそのまま真似するのではなく、自社の事業内容や規模に合わせた対策を考えるべきです。

全社的な取り組みとして進める

BCP対策は一部の担当者だけのものではなく、会社全体で取り組むべき課題です。経営層が主導して重要性を示し、各部門からメンバーを集めたチーム編成で進めると効果的です。また、策定した計画は社内全体に周知し、定期的な教育や訓練を通じて理解を深めることが重要です。全員が当事者意識を持つことで、いざというときにスムーズな対応が可能になります。

定期的な見直しと改善を行う

BCP対策は作って終わりではありません。策定した計画は定期的にテストや訓練を行い、問題点を洗い出して改善していくことが重要です。

会社の状況や外部環境は常に変化するため、年に1回程度は内容を見直し、必要に応じて更新すべきです。訓練で明らかになった課題や、新たなリスク要因も計画に反映させていくことが大切です。

取引先との連携も視野に入れる

自社だけでなく、取引先や協力会社を含めた対策も考えるとよいです。いくら自社の復旧が早くても、重要な取引先が復旧できなければ事業の継続は難しくなります。

主要な取引先とは事前に非常時の対応を話し合い、互いの復旧目標や連絡体制を確認しておくと安心です。可能であれば、代替となる取引先も確保しておくとさらに安心です。

重要書類の管理にも注意を払う

BCPの対策で、見落としがちなのが重要書類の管理です。災害時に重要な書類やデータが失われると、事業の復旧に大きな支障をきたします。契約書、図面、マニュアル、お客様の情報など、事業継続に必須の書類はなにかを特定し、安全な方法で保管する必要があります。特に紙の書類は火災や水害に弱いため、防災対策を施した保管場所を確保するか、専門の書類保管サービスを利用することも検討するとよいでしょう。非常時にすぐに取り出せるよう、整理と管理の仕組みも大切です。

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この記事を書いた人

書庫番人コラム編集犬

書庫番人コラム編集犬

書類管理・機密文書廃棄などのオススメ方法を中心に皆様のお役立ちコラムを執筆している犬です。コラムを読んでも分からなかったことはお気軽に書庫番人のお問い合わせフォームからお問い合わせください。