看護記録の保存期間、書き方などを詳しく説明!

患者さんの状態を素早く情報収集し把握するためには必要不可欠な看護記録。看護記録って何を記載するもの? どんなときに役立つの? 保存期間は定められている? など看護記録に関する内容を解説いたします。

看護記録とは

看護記録とは看護師が現場で実践した一連の看護過程を記録したものです。患者さんの全情報を記述した診療録の「経過記録」に位置付けられていて、「誰がいつどのような看護ケアを行ったのか」を中心に、患者さんのあらゆる情報を記載しています。ほとんどの医療施設では看護業務の一つとして、患者さんごとに記載・作成します。

看護記録を作成・保存する意味とは

看護を実践した事実の証明

看護実践の一連の過程を記録することにより、患者さんに対して適切な看護を実践したという事実の証明になります。患者さんやそのご家族と医療従事者との間で何らかのトラブルが起こったとき、看護記録は看護実践の事実を証明するための重要な資料となります。

看護実践の一貫性・継続性の担保

看護記録を作成し、看護記録を通じて看護実践の内容を共有することにより、患者さんへの看護ケアの一貫性や継続性を担保することができます。

看護実践の評価・質の向上

看護記録に書かれた看護実践を振り返り、評価することで、より質の高い看護実践を提供することにつながります。また、看護研究等で看護記録に書かれた看護実践の内容を蓄積、それらを分析することで、新しい知見を得ることができるでしょう。

看護記録を書く上でのポイント

  • 患者さんの病態生理を理解する
  • 問題点を順序立てて書く
  • 誰が読んでも分かる表現を使う
  • 使用する用語・略語は施設内で統一する

看護記録の構成要素

看護記録には必ず記録しなければいけない要素があります。もし一つでも記されていなければ、必要な情報を記載しきれていないとみなされるため、看護記録を作成する際は必ず不備がないかをしっかり確認をしましょう。

基礎情報

基礎情報とは、患者さんやその家族から得た情報を記載します。個人情報やプライバシーにかかわる情報のため取り扱いには注意が必要です。また対象となる患者さんを理解するため、現状および、今後必要となる看護ケアや、起こり得る課題を判断するために必要な情報なども記載します。

看護問題リスト

看護問題リストとは、患者さんが抱える問題を抽出し、優先順位をつけた情報のことです。患者さんの状況に合わせて必要な看護ケアを把握し、優先度の高いものから看護ケアを行うために役立ちます。一般的に「NANDA-I」や「カルペニート」などあらかじめ分類化されたリストをもとに、患者さんに適した看護診断を選択します。職場や患者さんによっても使用する看護診断は異なるため、どの看護診断を活用しているかを把握しておくとよいでしょう。

看護計画

看護計画とは、抽出した看護問題をもとに問題解決に向けた個別ケアの計画と観察項目、目標を記載したものです。観察項目や目標、計画内容は、看護問題ごとに分けて記載する必要があります。計画内容は一般的に「観察計画(O-P)」「教育計画(E-P)」「援助計画(T-P)」の3つに分けて書き出します。このとき、患者さんを主語として記入するようにしましょう。
看護計画は、患者さんやそのご家族に見せ、看護計画を説明します。同意を得られれば、看護計画の書面にサインをしてもらいます。

経過記録

経過記録とは、患者さんの意向や健康問題、治療内容、実践した看護内容の経過を要約したものです。経過記録は看護記録の中でも、実施した治療内容・ケア内容や責任の所在が明確になる部分であるため、情報不足や不明確な表現はなるべく避けて、より詳しく記入することが書き方のポイントです。基本的に、看護計画にもとづいた看護ケアを実践したのちに記入します。
経過記録には「POS(問題志向型システム)」形式で作成しますが、このPOSをベースに患者さまの問題にフォーカスして「SOAP形式」で看護記録を作成します。またSOAPの代替えとして、「DAR(フォーカス・チャーティング)」があります。

POSとは

POSとは「問題志向型システム(Problem Oriented System)」の略称で、患者さんの持つ「問題」を治療の軸とし、その問題に沿って治療や医療・看護を展開する治療過程のことです。

SOAPとは

POSをベースに、患者の問題にフォーカスした看護師の記録です。SOAPのそれぞれの語の意味は以下の通りです。

S(subjective):主観的情報患者さんの訴えや患者さんの家族の意向など、主観的な情報を記録。
O(objective):客観的情報所見や診察・検査から得られたS以外の情報(客観的情報)。
A(assessment):アセスメント・評価SとOの情報に対し、看護師が考えたことを記録。
P(plan):看護計画Aに対し看護師が必要だと思ったケアや処置、行動等を記録。

SOAPの他に、「I:介入」、「E:評価」、「R:修正」の3項目が加わることがあります。

DAR(フォーカス・チャーティング)とは

フォーカス・チャーティングは「Focus(フォーカス)」、「Data(データ)」、「Action(アクション)」、「Response(レスポンス)」の4つの構成要素をもとに展開していきます。「Focus(フォーカス)」の部分は独立して記載するため、一般的にはFを除いて、“DAR”と呼ばれています。

F(focus):フォーカス患者さんの問題や、問題解決に向けた具体的なケア内容、その先の目標に焦点を当て、出来事や懸念点を記録。
D(data):データ検査結果やバイタルサインといった主観的・客観的な情報や、ケアが必要であれば状況について記録。
A(action):アクション医療スタッフが、Fの内容に対して行った治療・指導や今度の計画を記録。
R(response):レスポンスAに記録した内容に対する患者さんの結果や反応を記録。

看護記録を作成するにあたり、ケースによってあらゆる作成形式を用いることが特徴です。そのため、すべての作成形式に特徴や書き方ついて十分に理解しておくとよいでしょう。

看護記録の保存期間

看護記録は医療機関の記録として保存期間が定められております。医療機関の記録には他にも、診療録と助産録があります。診療録は、医師法第24条に、助産録は保健師助産師看護師法第42条に、その記録が法的に規定されています。しかし、看護記録は保健師助産師看護師法に記録の規定はありません。医療法及び医療法施行規則においては、看護記録は、地域医療支援病院及び特定機能病院の施設基準等の一つである「診療に関する諸記録」として2年間保存と規定されています。

診療に関する諸記録は、過去2年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エツクス線写真、紹介状及び退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約とする。

医療法施行規則

看護記録の保存期間は、法律によって「2年間」と定められています。しかし看護記録は医療ミスの疑いをかけられた場合に、正当性を主張するための証拠となるため、2年以上にわたり保存している病院も多くあります。リスクを考慮すると、損害賠償請求の消滅時効までは保存できると理想的と言えるでしょう。損害賠償請求の消滅時効は「被害者が損害賠償請求できることを知った時から5年間、医療行為の時から20年間」なので20年間保存すると安心でしょう。

看護記録の管理

看護記録は多くの個人情報が記載されているため、保存方法にも気を遣う必要があります。患者さんへ医療・介護サービスを提供する関係者や、入退院などの事務管理・病棟管理にかかわる関係者以外が閲覧できないよう、適切に保存場所へと収めることが重要です。電子カルテの場合も同様に、システムを使用しない際はログオフを徹底する、パスワードなどで外部からのアクセスを防ぐなど、情報漏れを防ぐための対策をしておきましょう。

まとめ

看護記録は患者ごとに作成されるのでかなりのスペースが必要です。看護記録だけでなく他にも保存が必要な書類がたくさんあり、整理するのも一苦労ですよね。施設内に書類が溜まってお困りなら、外部の書類保管サービスに預けてみるのはいかがでしょう。個人情報を外部委託するのは不安と感じるかもしれません。しかし書庫番人の書類保管サービスならセキュリティ万全のため病院のお客様も多く、カルテ・レントゲンの取り扱いも積極的に行っています。さらに保存期間が過ぎたら通知が来るので無駄な保管料もかからず経済的です。
ご相談は無料ですので、まずはお気軽にお悩みをお伝えください。

この記事を書いた人

書庫番人コラム編集犬

書庫番人コラム編集犬

書類管理・機密文書廃棄などのオススメ方法を中心に皆様のお役立ちコラムを執筆している犬です。コラムを読んでも分からなかったことはお気軽に書庫番人のお問い合わせフォームからお問い合わせください。