会計帳簿の保存期間解説!法律に基づく適切な管理方法

企業経営において「会計帳簿」は不可欠です。会計帳簿はただの記録ではなく、企業の健全性や将来性を示す重要な記録です。しかし、会計帳簿の種類や法的な要件などは複雑でわかりにくいことが多々あります。このガイドでは、会計帳簿の保存期間に関する法律の要件を詳しく解説し、適切な管理方法を紹介します。

会計帳簿とは

企業は日々の取り引きやお金の流れを帳簿に記録する必要があります。会計帳簿はその記録を行うための重要なツールであり、企業活動において欠かせない存在です。会計帳簿にはさまざまな種類や目的があり、大きく「主要簿」と「補助簿」の2つに分類されます。主要簿は企業全体の財務状況を一括して記録するものであり、補助簿は特定の取り引きや項目ごとの詳細な情報を記録するためのものです。異なる目的や範囲で使用される帳簿が相互に補完し合うことで、企業の正確な財務状況を把握できます。

帳簿の種類

主要簿補助簿(補助元帳)補助簿(補助記入帳)
仕訳帳
総勘定元帳
日記帳
商品有高帳
買掛金元帳
売掛金元帳
現金出納帳
預金出納帳
支払手形記入帳
受取手形記入帳
仕入帳
売上帳
経費帳
固定資産台帳

※細かい名称は企業ごとに変わってきます。

さまざまな種類の帳簿を総称して「会計帳簿」と呼びます。注文書、契約書、領収書などの類似書類は会計書類として分類されます。これらの書類は、それぞれ異なる法律に基づいた保管期間が定められており、正確な管理が求められます。

法律で定められた保存期間

会計帳簿の保存期間は、主に法人税法と会社法によって定められています。これらの法律は、企業が取り引き内容や財務状況を適切に記録し、一定期間保存することを義務付けています。しかし、同じ帳簿でも適用される法律によって保存期間が異なる場合があります。

法人税法の保存期間

法人税法によると、帳簿書類は、法人税法施行規則第59条の規定により、所定の起算日から7年間保存しなければなりません。

法人は、帳簿を備え付けてその取り引きを記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。

参考:国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間

起算日とは
起算日とは、期間の計算にあたり、数えはじめの初日となる日のことです。帳簿の起算日は、取引先から書類を受け取ったり、自社で書類を作成したりした日の属する事業年度終了の日の翌日から2ヶ月を経過した日です。

会社法の保存期間

会社法では、会計帳簿および関連書類を10年間保存しなければならないと定められています。

株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

参考:e-Gov法令検索|第四百三十二条2

保存期間に迷ったら保存期間が長いほうに合わせる

会計帳簿の保存期間に迷った場合は、基本的に保存期間が長いほうに合わせましょう。これは、法的な要件を確実に満たすための一般的な対処法です。帳簿の保管期間は、法人税法では帳簿書類の保存期間を7年間と定めていますが、会社法では10年間の保存が義務付けられています。このような場合、10年間の保存期間に従うことで、どの法律の要件にも適合し、法的な問題を未然に防ぐことができます。また、会計帳簿だけでなく、注文書、契約書、領収書などの関連する書類も同様に保存期間が異なるかもしれません。これらの書類も、基本的には保存期間が長い10年間のほうに、まとめて合わせて保存することをオススメします。

法律間の保存期間の違いによるリスクの回避

法律ごとの保存期間に差がある場合、短い期間に合わせると他の法律に違反してしまうリスクがあります。中でも税務調査においては、過去の会計帳簿が重要な証拠として扱われてしまいます。税務当局が過去の取り引きや会計処理を詳しく調べる際に、保存期間が短いほうに合わせていた場合、必要な帳簿が手元にないことがあるかもしれません。このような状況になると、適切な証拠を提出できず、過去の申告に問題があったと指摘されるリスクが高まります。具体的には、税務調査で過去の帳簿を提出できない場合、税務当局はその期間の申告内容に疑問を持ち、追徴税や罰金が課される可能性があります。これにより、企業にとっては経済的な負担が増すだけでなく、信用問題にも発展するかもしれません。

このリスクを回避するためには、異なる法律で要求される保存期間の中で最長の期間に従い、帳簿を保存することを心がけるべきでしょう。

罰則の例

税法によると、帳簿保存違反の罰則は「青色申告の取り消し」という処分によって行われます。青色申告は、指定された帳簿を用意して記帳し、その記録に基づいて確定申告を行う制度であり、多くのメリットを提供しています。青色申告を行うことで、10万円または65万円の特別控除を受けられます。この特別控除は、所得税や法人税の減額に大きく貢献するため、多くの企業が青色申告を利用しています。しかし、帳簿を適切に保存していない場合、青色申告が取り消されるリスクがあります。他にも、青色申告が取り消された場合、以下のような税制上のメリットを一切受けることができなくなります。

  • 欠損金の繰り越し:過去の赤字を翌年以降に繰り越して、利益と相殺することができなくなる
  • 損金算入:損失を損金として算入できなくなり、課税所得が増加する

これにより、税負担が大幅に増加するため、企業にとっては大きな痛手となるでしょう。

企業の信頼性とコンプライアンスの確保

適切な帳簿管理は企業の財務状況を明確にするため、投資家や取引先からの信頼を得ることができます。透明性の高い財務情報を提供することで、企業は投資家に対して信頼性のあるパートナーとして評価され、資金調達や取り引きの拡大に広がります。特に、上場企業や大規模な取り引きを行う企業にとっては、この信頼性が非常に重要です。また、内部監査や外部監査の際に必要な情報を迅速に提供することは、監査対応をスムーズに進行させる鍵となります。適切に整理された帳簿は、監査担当者が求めるデータを迅速かつ正確に提供できるため、結果として監査プロセスが円滑に進行します。これにより、監査に伴う業務負担を軽減し、企業の運営効率を高められるでしょう。

さらに、法令を遵守することは、企業の社会的評価を向上させる要素でもあります。法令遵守は企業のコンプライアンスの基本です。法令に準拠した運営は、取引先からの信頼を高め、企業のイメージアップにも繋がります。例えば、企業が法令を遵守し、適切に帳簿を管理していると公表することで、CSR(企業の社会的責任)活動の一環としてアピールできるでしょう。

書類保管サービスの利用

企業にとって、帳簿や書類の保存スペースの確保は大きな課題となります。特に、保存期間が長期にわたる場合、物理的なスペースの確保だけでなく、書類の管理やセキュリティ対策も必要です。この問題を解決するために、書類保管サービスを利用するとよいです。一般的な書類保管サービスでは、書類の集配送や簡単なWeb管理システムが提供されています。これにより、企業は書類の保存場所を確保するだけでなく、必要なときに迅速に書類を取り寄せることができます。しかし、これらの基本サービスだけでなく、書類保管サービスを選ぶ際には、以下のポイントを重視しましょう。

  • サポート面の充実度
  • セキュリティ対策
  • オプションの廃棄サービス

これらのポイントを考慮して書類保管サービスを選ぶことで、書類管理の負担が大幅に軽減されます。

保存期間が切れた会計帳簿の廃棄方法

保存期間が終了した会計帳簿などの書類は、適切に廃棄することでスペースを有効に活用できます。会計帳簿の廃棄方法にはいくつかの選択肢があるためそれぞれを見ていきましょう。

社内でのシュレッダーによる処理

シュレッダーを使うことで、社内で簡単に書類を処理し、情報漏洩のリスクを大幅に減らすことができます。特に、少量の書類処理にはこの方法が最適です。手間をかけずに迅速に処理できるため、日常的な業務での使用にも適しています。ただし、大量の書類を一度に処理する際には時間がかかってしまいます。そのため、大規模な廃棄が必要な場合は、より効率的な方法を検討する必要があるでしょう。

廃棄サービスでのシュレッダー&焼却処理

廃棄サービスを利用して書類をシュレッダーで処理したあと、焼却する方法もあります。この二重の処理により情報は物理的に破壊され、セキュリティが大幅に強化されます。しかし、この方法は環境への影響があり、シュレッダーだけでの処理に比べてコストが高くなることがあります。コストとのバランスを慎重に考えましょう。

廃棄サービスでの溶解処理

溶解処理は、薬品を用いて書類を溶かし、情報を完全に破壊する方法です。大量の書類を短時間で効率的に処理できるため、特に、定期的な大量廃棄が必要な大企業に適しています。処理後の物質は再生紙としてリサイクル可能で、環境への影響を最小限に抑えられています。また、セキュリティ面では溶解処理により情報が完全に消失するため、情報漏洩のリスクが極めて低く、多くの企業にとって信頼性の高い選択肢となっています。

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この記事を書いた人

書庫番人コラム編集犬

書庫番人コラム編集犬

書類管理・機密文書廃棄などのオススメ方法を中心に皆様のお役立ちコラムを執筆している犬です。コラムを読んでも分からなかったことはお気軽に書庫番人のお問い合わせフォームからお問い合わせください。