株式会社には、事業報告書の作成が法律で義務づけられています。しかし、「なにを書けばいいのかわからない」「どのように管理すればいいのか迷う」という声も少なくありません。
本記事では、事業報告書の基本的な記載項目から作成の効率化のコツ、さらには5年間の保管義務を踏まえた管理方法まで、実務に役立つポイントをわかりやすく解説します。はじめて事業報告書を作成する方も、業務改善を目指す方も、ぜひ参考にしてください。

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事業報告書とは
企業の事業年度ごとの事業概況、経営成績、財務状況などを記載し、主に株主に対して情報開示を行うために作成される書類です。株主、債権者などの利害関係者が、会社の経営状況を正確に把握するための重要な報告資料としての役割を担っています。適切な事業報告書の作成は、企業の信頼性を高め、ステークホルダーとの良好な関係構築にも寄与します。
事業報告書の目的と法的義務
目的
企業活動の透明性を確保し、株主に対する説明責任を果たすことが最大の目的です。これにより、株主の会社経営に対する理解を促進し、適切な議決権行使を可能にします。また、経営陣の業務執行の妥当性を検証する機会を提供することで、企業統治の強化にも貢献しています。投資家や金融機関などの外部関係者にとっても、融資判断、取引判断の重要な材料となるため、正確かつ詳細な記載が必要です。
法的義務
株式会社は、会社法第435条第2項に基づき、定時株主総会に際して、法務省令で定めるところにより、事業報告書を作成することが義務づけられています。作成後は、計算書類とともに監査を経て、株主総会に提出または提供する必要があります。この義務に違反した場合、罰則が科される可能性があるだけでなく、企業の信用問題にも発展しかねません。特に上場企業は、金融商品取引法に基づく有価証券報告書との整合性も求められるため、より一層の注意が必要となります。
中小企業でも必要となるケース
事業報告書の作成義務は、大会社、公開会社に限定されるものではなく、株式の譲渡制限を設けている中小企業(非公開会社)を含む全ての株式会社に適用されます。ただし、会社法施行規則では、非公開会社、一定規模以下の会社は、記載事項の一部が簡略化・省略可能とされているため、自社の形態に応じた作成が必要です。中小企業であっても、取引先からの信用評価、金融機関からの融資審査などの事業報告書の提出を求められるケースが増えています。そのため、法的義務を満たすだけでなく、自社の事業内容を適切に説明できる内容を心がけることが重要です。
事業報告書の作成方法と記載項目
基本の記載事項
会社法施行規則に基づき、主に以下の事項を記載する必要があります。これらの項目は、会社の実態を多面的に把握するために設定されており、漏れなく記載することが求められます。
- 会社の状況に関する事項:会社の組織の概要、役員の状況、株式に関する事項、新株予約権に関する事項など
- 事業の経過およびその成果:当該事業年度の事業の経過、会社の収益の状況、資産の状況など
- 対処すべき課題:将来の経営課題、会社の現況に関する重要な事項
役員の状況は、氏名、役職、重要な兼職の状況などを明記します。株式に関する事項では、発行済株式総数、株主数、大株主の状況などを記載することが一般的です。事業の経過は、当期の主要な営業活動、設備投資の状況、研究開発活動などを具体的に説明することで、株主の理解を深めることができます。
参考:会社法施行規則 第百十八条|e-Gov法令検索
参考:会社法施行規則 第百二十一条|e-Gov法令検索
判断が必要な項目の書き方のポイント
「会社の現況に関する重要な事項」「対処すべき課題」は、客観的な事実だけでなく、経営者の判断、将来の予測に基づく記載が求められるため、特に慎重な対応が必要となります。これらの項目は定型的な記載が難しく、会社ごとの状況に応じた独自の記述が必要です。
客観性と整合性
記載内容は、計算書類(貸借対照表、損益計算書など)との整合性が保たれていることが不可欠です。数値的な裏付けがない主観的な記載は、株主の信頼を損なう恐れがあります。前期との比較、業界動向との対比なども含めることで、より説得力のある内容になります。
将来情報の取扱い
達成の見込みが薄い過度な楽観的予測は避け、リスク要因を含めた多角的な視点から記述することが望ましいでしょう。市場環境の変化、競合の動向、技術革新の影響なども考慮した現実的な見通しを示すことが重要です。また、経営課題に対する具体的な対応策を明示することで、株主の不安を軽減し、経営陣の戦略的思考を示すことができます。
事業報告書作成を効率化するコツ
情報収集・社内連携をスムーズにする方法
事業報告書の作成には、各部署(経理、総務、企画、営業など)からの情報収集が不可欠です。部門間の連携不足は、記載漏れ、情報の不整合を引き起こす主要な原因となります。
スケジュール管理の徹底
株主総会の日程から逆算し、情報収集・原稿作成・監査・承認までのプロセスを詳細に設定します。各段階の担当者、期限を明確化し、進捗管理を行うことで、直前の慌ただしさを回避できます。特に、監査役、会計監査人による監査期間を十分に確保することが重要です。
統一フォーマットの活用
毎年使用する項目、定型文をテンプレート化し、情報提供者側の負担を軽減することが効率化に繋がります。各部署が提出すべき情報の形式を標準化することで、取りまとめる側の作業時間も大幅に短縮されます。また、前年度の記載内容をベースに変更点のみを更新する方式を採用すれば、一貫性のある報告書を効率的に作成可能です。
社内説明会の開催も効果的な手段です。事業報告書の重要性、各部署に求められる情報の内容を説明することで、協力体制を構築できます。
ミスを減らすチェックリストの活用
法令遵守と記載漏れを防ぐため、以下の項目を網羅したチェックリストを活用することが推奨されます。複数の担当者によるクロスチェック体制を整えることで、ミスの発見率が向上します。
- 会社法施行規則上の必須記載事項の網羅
- 計算書類との数値的な整合性
- 役員異動、重要な組織変更などの事実記載漏れの有無
チェックリストには、前年度からの変更点を確認する項目も含めるとよいでしょう。役員の就任・退任、事業所の新設・廃止、株式の分割・併合など、株主にとって重要な変更事項を見落とさないよう注意が必要です。また、法令改正による記載要件の変更がないかも、毎年確認することをお勧めします。
事業報告書の管理と保管のポイント
保管期間と注意点
事業報告書の保管期間:5年間
会社法第435条、436条により、事業報告書は定時株主総会の日から5年間、本店に保管することが義務づけられています。この保管義務は、株主、債権者などからの閲覧請求に対応するためのものであり、保管場所は本店となります。
同時に作成・保管することも多い計算書類と附属明細書は「作成したときから10年間」が保管期間となります。わざわざ事業報告書のみを5年で廃棄するフローにすると手間がかかってしまうため、まとめて10年間保管とするケースが多いようです。
参考:会社法 第四百三十五条|e-Gov法令検索
参考:会社法 第四百四十二条|e-Gov法令検索
書類管理をラクにする仕組みづくり
5年間の長期保管には、検索性の高さとセキュリティの確保が必須です。必要な書類を迅速に取り出せる体制を整えることで、株主からの閲覧請求、監査対応などにスムーズに対応できます。
紙でのファイリング
年度別、株主総会開催日別などに整理し、「年度+書類種別」を明記したシンプルなルールを設けます。保管場所も固定化し、担当者以外でも所在がわかるよう、管理台帳を作成することが望ましいでしょう。耐火性のある保管庫を使用することで、火災などの災害リスクにも備えられます。
電子データでの管理
電子的に作成された報告書は、権限管理が行き届いたシステム、クラウドサービスで管理し、災害、物理的な破損のリスクに備えることが望ましいでしょう。バックアップも定期的に取得し、複数の場所に保存することで、データ消失のリスクを最小限に抑えられます。電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存すれば、紙での保管スペースを削減することも可能です。ただし、電子データでの保管を行う場合は、改ざん防止措置、アクセス権限の適切な設定が不可欠となります。
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