経理書類の保管期間の把握は、企業経営で非常に重要な管理事項です。法律で定められた期間を守ることは、単なる義務ではなく、企業の信頼性維持やリスク管理にも直結します。本記事では、経理書類の種類ごとの保管期間、永久保管が必要な書類、効率的な管理方法など、経理書類の保管に関する重要ポイントを詳しく解説します。

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経理とは?
経理とは「経営管理」の略といわれ、企業の日々のお金の出し入れや取り引きの流れを帳簿に記録する業務です。似た言葉には会計と財務がありますが、会計は金銭の記録業務、財務は資金調達や運用を行う業務と役割が異なります。経理は、これら会計・財務の基礎となるデータを提供する重要な役割を果たしています。
主な経理書類とは?
主な経理書類には、会計帳簿、伝票類、その他の書類があります。帳簿として代表的なものには、仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳などがあり、これらは日々の取り引きを記録し、企業の財務状況を把握するための基礎資料となります。伝票類には、請求書、領収書、納品書などが含まれ、これらは取り引きの証拠書類として、また会計処理のもととなる重要な書類です。その他の書類には、納税申告書、契約書、決算書類(貸借対照表、損益計算書)など、企業の経営に欠かせない書類が数多く存在します。これらの経理書類は法令で定められた期間、適切に保管する必要があります。
経理書類の保管期間一覧表
| 保管期間 | 書類名 | 主な書類 | 起算日 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 計算書類および附属明細書 | 貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表 | 作成日 |
| 10年 | 会計帳簿および事業に関する重要書類 | 総勘定元帳、仕訳帳、各種補助簿(現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳など)株式申込簿、株式割当簿、株式台帳、株式名義書換簿、配当簿、印鑑簿 | 帳簿閉鎖のとき |
| 7年 | 決算に関して作成された書類 | 10年保管が義務づけられている書類以外の決算関連書類(棚卸表など) | 事業年度の確定申告書の提出期限の翌日 |
| 7年 | 現金の収受、払出、預貯金の預入・引出に際して作成された取引証憑書類 | 領収書、預金通帳、借用証、小切手・手形控、振込通知書 | 事業年度の確定申告書の提出期限の翌日 |
| 7年 | 取引証憑書類 | 請求書、注文書、契約書(賃貸借契約、業務委託契約など)見積書、領収書、納品書、注文書、納税申告書、入金伝票、出金伝票、振替伝票、仕入伝票、売上伝票 | 事業年度の確定申告書の提出期限の翌日 |
| 7年 | 給与関係書類 | 扶養控除等申告書、配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書、源泉徴収簿、給与明細書(法律上の明確な義務はないが保管推奨) | 提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日 |
| 5年 | 賃金台帳 | 源泉徴収簿を兼ねていない賃金台帳 | 最後に書き入れた日から起算して5年間保管 |
| 5年 | 監査報告(本店備置き分) | 監査役設置会社等の監査報告書 | 株主総会の1週間前の日 |
| 5年 | 会計監査報告(本店備置き分) | 会計監査人設置会社の監査報告書 | 株主総会の1週間前の日 |
その他の書類も含む、保管期間の詳細を知りたい方は、下記のページも参考にしてください。
書類保管サービス「書庫番人」:法定保存文書の保存期間一覧
永久保管が必要な経理書類
永久保管が必要な経理書類は、法律での明確な定めはありませんが、企業の基本や権利関係に関わる重要書類として、適切な管理が必要です。管理する際には、専用ファイルを作成し、鍵付きの棚で厳重に保管することをオススメします。主な永久保管書類には、定款(企業の基本情報や規則をまとめた書類で、法人口座開設や助成金申請に必要)、株主名簿(株主の氏名、住所、株式数などの記録で、会社法により作成が義務付け)、登記・訴訟関係書類(不動産登記、権利書など)、製品開発・設計関係書類(特許書類など)、その他重要書類(永続的効力のある契約書、官公庁への提出書類、労働組合との協定書など)があります。
保管期間10年が必要な経理書類
会社法により、決算書類などの重要会計書類は10年間の保管が義務付けられています。これらの書類は起算日が異なるため、保管期間の管理には注意しましょう。作成日から10年保管が必要な書類は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表などの計算書類や、株式申込簿、株式割当簿などの株式関連書類です。一方、決算締切日から10年保管が必要な書類には、総勘定元帳、仕訳帳、補助簿などの会計帳簿があります。
保管期間7年が必要な経理書類
法人税法により7年間の保管が義務付けられている書類は、主に取り引きや税務に関するものが中心です。保管期間が7年の経理書類は多岐にわたるため、適切な分類と整理を心がけましょう。主な7年保管書類には、10年保管に該当しない決算書類である棚卸表があります。領収書、契約書、注文書、見積書、仕入伝票などの取引証憑書類や、有価証券受渡計算書、有価証券預り証、売買報告書、社債申込書などの有価証券関連書類も7年間保管が必要です。加えて、給与所得者の扶養控除等申告書や住宅借入金等特別控除申告書も同じく7年間保管しなければなりません。
保管期間5年が必要な経理書類
保管期間が5年の経理書類は、主に労務関係や社会保険に関する書類が多いです。これらの書類には個人情報が含まれているため、セキュリティを徹底した管理が欠かせません。主な5年保管書類としては、賃金台帳(ただし源泉徴収簿を兼ねている場合は7年になります)労働者名簿、タイムカードなどがあります。また、労働保険料の徴収に関する書類、健康保険・厚生年金・雇用保険関連書類も5年保管が必要です。雇入・解雇・退職に関する書類は3年保管ですが、他の書類と一緒に管理するなら、5年間保管しておいた方が安心できるかもしれません。
保管期間の補足
経理書類の保管期間にはいくつか注意すべき点があります。法令の違いによる期間の差異や、特殊な状況での保管期間の延長など、把握しておくべきポイントを解説します。
決算関係書類の保管期間は法人税法と会社法で異なる
貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、棚卸表などの決算関係書類は、法人税法では7年間の保管が義務付けられていますが、会社法では10年間の保管義務があります。
法令による保管期間の違いに注意!廃棄のタイミングを見極める
経理書類は複数の法令で異なる保管期間が定められているため、廃棄のタイミングには、注意しましょう。例えば会計帳簿では、会社法上では10年間、法人税法上では7年間という異なる保管期間が設定されています。このような場合は、最長の保管期間(この場合は10年間)を基準に保管することで、全ての法令要件を満たせます。
取引証憑書類は法人と個人事業主で保管期間が異なる
請求書、領収書、契約書、見積書、納品書などの取引証憑書類は、法人では7年間の保管が必要です。間違えやすい点として、個人事業主の場合では、請求書などは5年間の保管義務がありますが、消費税のインボイス制度の下での適格請求書も7年間の保管が必要となるため、注意しましょう。
欠損金が生じた場合の保管期間は10年に延長
法人税法においては、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。
ただし、法人の青色繰越欠損金または災害損失金額が生じた事業年度は、保管期間が10年に延長されます(2018年4月1日前に開始した事業年度は9年間)。欠損金が発生した年度の書類は特に慎重に管理しましょう。
経理書類の保管期間はなぜ守らなければならない?
経理書類の保管期間は法律で明確に定められており、適切に守らなければなりません。保管期間中に書類を廃棄してしまうと、法律違反となりペナルティを受ける恐れがあります。
法律違反による罰則リスク
経理書類の保管期間は法律で明確に定められています。税法上は書類保管義務違反に対する直接的な罰則規定はありませんが、会社法には罰則規定が存在します。実際に過料が科せられるケースは少ないものの、違反が判明すれば法的なリスクを抱えることになります。
税務調査での不利益
より現実的な問題として、税務調査で保管義務違反が発覚した場合、深刻な不利益を被るかもしれません。具体的には、青色申告の取り消しや推計課税などの措置が取られ、結果として大きな金銭的負担が生じます。
企業の信用問題
適切な書類管理は、企業の信用にも直結します。法令遵守の姿勢を示すことで、取引先や金融機関からの信頼を維持し、円滑な事業運営につながります。
トラブル時の証拠資料としての重要性
取引トラブルや訴訟が発生した場合、保管されている経理書類が重要な証拠となるでしょう。必要な書類が適切に保管されていないと、企業の主張を裏付けることができず、不利な立場に置かれる可能性があります。
経理書類の効率的な保管方法とファイリングのコツ
ここでは、経理書類を効率的に管理するためのポイントや実践的なファイリング方法を解説します。適切な分類方法から保管環境の整備まで、業務効率化につながる情報をお伝えします。
まずは書類の分類からはじめる!保管期間ごとの仕分け方法
経理書類を効率的に保管するために、まず書類の整理と分類からはじめましょう。
ステップ1:不要書類の廃棄
- 保管期間が過ぎた書類を特定
- 「保管する書類」と「廃棄してもよい書類」に分類
- 保管期間を過ぎた書類を適切に廃棄
ステップ2:保管書類の4分類
- 永久保管する書類
- 10年保管の決算書類
- 7年保管の決算書類
- 給与関係書類
※7年保管書類と10年保管書類は、管理を簡略化するため、まとめて10年保管とする方法もオススメです。
分類した書類は、それぞれの特性に合わせてファイリングしましょう。
永久保管書類のファイリング
- ポケットリフィルを使用
- 「設立」「届出」「議事録」などのラベル付け
- 鍵付きキャビネットで保管
決算書類のファイリング(10年・7年保管)
- 年度ごとにファイル作成
- 書類の種類で分類
- 請求書・領収書は月別または取引先別に整理
- レシートは日付順に貼り付け、月ごとに保管
給与関係書類のファイリング
- 社員数多:社員ごとにファイリング
- 社員数少:書類種類ごとにファイリング
保管スペースとセキュリティ対策のポイント
ポイントは主に2つです。
保管環境の整備
- 湿度・温度管理された場所での保管
- 直射日光を避ける
- 災害対策(耐火金庫や防水対策)の実施
セキュリティ対策
- 鍵付きキャビネットの活用
- アクセス権限の設定
- 定期的な書類の所在確認
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書類保管サービスのメリット
- セキュリティ対策が万全な専用施設での保管
- 適切な温度・湿度管理で書類の劣化防止
- Web管理システムによる書類の一元管理
- 必要書類の迅速な配送
- 保管期限管理と適切な廃棄サービス
しかし、書類保管サービスの中には書類を預かるだけのサービスやセキュリティ面が不足しているところもあります。書類保管サービスはたくさんあるため、しっかりと調べるようにしましょう。
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