近頃、経営や業務効率向上のための知識はますます重要となっています。事務職の方々は、毎日さまざまな書類を取り扱う中で、計算書類と財務諸表の違いを正確に理解することが求められています。しかし、これらの書類の違いや特徴は、一見では判別が難しいです。この記事では、計算書類と財務諸表がどのように異なるのか、その機能や用途を詳しく、そしてわかりやすく解説します。加えて、それらの書類を日々の業務にどのように活用するのか実践的なアドバイスも交えて紹介します。ぜひ、業務の一助として参考にしてください。
計算書類と財務諸表の違い
計算書類と財務諸表は、一般的に「決算書」として認識されています。決算書とは、企業の経営状況を示すための重要な書類です。計算書類と財務諸表は、混同しやすいですが、それぞれの法律や目的に応じて名称や内容が異なります。
計算書類と財務諸表の主な違いについて、以下の簡易表で詳しく見ていきましょう。
項目 | 計算書類 | 財務諸表 |
---|---|---|
法律 | 会社法 | 金融商品取引法 |
作成義務 | 全ての会社 | 上場企業のみ |
提出先 | 株主総会など | 内閣総理大臣および財務大臣 |
主な書類の種類 | 損益計算書 貸借対照表 株主資本等変動計算書 個別注記表 | 損益計算書 貸借対照表 キャッシュフロー計算書 株主資本等変動計算書 附属明細表 |
目的
計算書類と財務諸表には、記載内容の微妙な違いがあります。
計算書類は企業全体の財務状態を一目で把握することを目的としています。そのため、記載内容はシンプルに作成します。
それに対して、財務諸表は企業の財務状態を多角的かつ詳細に伝えることを目的としています。そのため、記載内容はより詳しく作成します。
両書類の主要な狙いは、企業の利害関係者に事業の成果や財務の健康状態を明確に伝える点です。例えば、「その事業年度の利益や損失の状況」や「会社の財務状態が健全か、リスクがあるか」といった経営状態の明確化が必要です。利害関係者とは、株主、資家、取引先、金融機関など企業運営に関心を持つ人々を指します。特に上場企業は、財務情報を正確に公開することが法律で義務づけられています。
作成義務
計算書類と財務諸表は、作成義務に大きな違いがあります。計算書類は全ての会社、つまり上場の有無や規模を問わず、作成する義務があります。各書類の作成義務や記載内容が違うのは、異なる法律に基づいているためです。一方で、財務諸表は上場企業が作成と公表を義務付けられていますが、非上場企業にはその義務はありません。情報公開が求められる上場企業において、財務諸表は投資家や市場に対して重要となってきます。
会社法に基づく「計算書類」
計算書類は、会社法に基づいて作成します。
株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。
株式会社は、計算書類を作成したときから十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。
引用:会社法 第四百三十五条
金融商品取引法に基づく「財務諸表」
財務諸表は、金融商品取引法に基づいて作成します。
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第一条で、財務書類のうち「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「キャッシュ・フロー計算書」および「附属明細表」、国際会計基準により作成する場合には「財政状態計算書」「包括利益計算書」「持分変動計算書」および「キャッシュ・フロー計算書」と定義されている(特例財務諸表提出会社を除く)。
引用:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第一条
計算書類の種類
計算書類には、「損益計算書」「貸借対照表」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」と複数種類があります。損益計算書、貸借対照表、株主資本等変動計算書は財務諸表と目的や用途、記載項目は一般的な財務諸表とほぼ同じです。
各計算書類の詳細は以下の通りです。
損益計算書
損益計算書は、企業の事業年度の経営成果を示す計算書類です。主に収益、費用、そしてその差額である利益(もしくは損失)で構成されており、企業の経済的パフォーマンスを把握できます。
記載内容は「収益」と「費用」の2つに分けられ、それぞれ数値化されたビジネスの活動が示されます。
項目 | 収益内容 |
---|---|
売上高 | 直接的な商品や事業サービスの売り上げ |
営業外収益 | 本業以外からの収益 |
特別利益 | 一時的な事項からの利益 |
項目 | 費用内容 |
---|---|
売上原価 | 商品の製造や仕入れにかかる費用 |
販管費 | 商品を販売する際に企業を運営するうえでの費用 |
営業外費用 | 本業以外の活動で発生する費用 |
特別損失 | 本業に関わらない一時的な損失 |
また、「事業税」「法人税」「住民税」など、さまざまな税金も費用として計上され、これらも利益を計算するうえで重要な要素です。損益計算書は、これら収益と費用の差分、すなわち「純利益」を計算し、その結果を外部の利害関係者に報告する役割を果たします。
貸借対照表
貸借対照表は計算書類の一部として、事業年度の最終日に企業の財務状態を示す書類です。企業の財務の健全性を評価し、将来のビジネス戦略を計画する上で欠かせない書類です。
資産には「流動資産」「固定資産」「繰延資産」などが含まれます。
項目 | 資産内容 |
---|---|
流動資産 | 売掛金、定期預金などの1年以内に現金化可能な資産 |
固定資産 | 不動産、車両、特許権などの時間とともに価値が減少していく資産 |
繰延資産 | 開業費や開発費などの前もって支払われたもの |
負債は「流動負債」「固定負債」の2つに分けられます。
項目 | 負債内容 |
---|---|
流動負債 | 買掛金や短期の借入れなどの1年以内に返済が必要 |
固定負債 | 長期借入金や退職給与引当金といった、より長い期間にわたる負債 |
純資産においては「株主資本」と「その他」の2つに分けられます。
項目 | 純資産内容 |
---|---|
株主資本 | 株主からの投資や積立られた利益 |
その他 | 株主資本以外に該当する項目で、土地再評価差額金や繰延ヘッジ損益などの内容 |
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、企業の前事業年度末から今事業年度末にかけての純資産の変動を示す計算書類です。純資産の変動額やその変動の理由を詳細に記載することで、企業の資金調達、配当、利益再投資などの資本政策の方向性を明示します。
個別注記表
個別注記表は、決算書(損益計算書、貸借対照表)の補足情報を集約した書類で、企業の重要な会計方針や特定の注記事項を明記します。目的は、決算書の数値だけでは伝わらない詳細や背景を、株主や関係者に正確に伝えるためです。この表は投資判断の際に不可欠な情報を含むため、企業の状況を探る上で非常に価値があります。
財務諸表の種類
財務諸表には複数の種類があり、その中でも特に「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」は、企業の財務状態を把握する上で欠かせません。「財務三表」と呼ばれており、それぞれ異なる視点から企業の経済的な状態を示しています。ほかにも、作成義務がある書類には「株主資本等変動計算書」「附属明細表」があります。
各財務諸表の詳細は以下の通りです。
損益計算書
損益計算書は、会社の利益や損失を表示した財務諸表のひとつです。
記載内容は、計算書類の損益計算書とほぼ同じですが、財務諸表の場合は項目ごとに関連する内容も含めてより詳細に作成します。
貸借対照表
賃借対照表とは、決算日の時点で企業が持つ資産と負債、その差額としての純資産の状態を一覧で表示した財務諸表のひとつです。
こちらも記載内容は計算書類の貸借対照表とほぼ同じですが、詳細な情報を加えて作成しましょう。
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書は、企業の一定期間における資金の動きを明確に表示した財務諸表のひとつです。
記載内容は「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに分けられています。
項目 | 活動内容 |
---|---|
営業活動 | 主要な事業からの現金生成量を示し、プラスなら運転資金が豊富な状態、マイナスなら運営上の課題が存在することを示す |
投資活動 | 設備投資や資産売却などの現金の出入りを記録し、プラスなら資産を現金化している状態、マイナスなら積極的な投資を行っている状況を反映する |
財務活動 | これまで挙げた営業と投資以外の資金調達と返済の流れを示す |
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、貸借対照表における株主資本の変動を示す書類です。「企業の儲け(利益)がどう使われたか」を明確に示します。株主や投資家は、この書類を通じて経営陣が企業利益をどのように活用しているか、その背後にある経営方針や意向などを理解できます。
附属明細表
附属明細表は、企業の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの主要な決算書を詳細に補完する役割を持つ書類です。主要なものに「有価証券明細表」「固定資産等明細表」「社債明細表」「借入金等明細表」「引当金等明細表」があります。これらは決算の詳細と透明性を提供します。そのほかに補足すべき事項があれば、別途明細表も作成されます。
計算書類と財務諸表の保管について
計算書類と財務諸表は企業の経営の証であり、適切な期間・方法での保管が求められます。安全かつ確実に管理することで、将来のビジネス展開や監査時にも対応できます。
保管期間
計算書類や財務諸表は、法定に基づき一定期間保管する義務があります。具体的には、財務諸表は金融商品取引法7年間の保管が義務づけられており、計算書類は会社法に基づいて10年間の保管が義務づけられています。
財務諸表は計算書類をより詳細にしたものであるため、計算書類の保管期間が適応されます。
よって、財務諸表も計算書類も、より保管期間が長い会社法に従い、10年間の保管が必要です。
保管方法
基本的には紙ベースでの保管が一般的ですが、電子データでの保管も可能です。ただし、電子データで保管する場合、データ改ざんの防止や漏洩防止などのセキュリティ確保や、データが容易に取り出せる状態を保つためのシステム整備が必要となります。それぞれの保管方法には、整理・ファイリング作業や環境整備に関連する手間とコストが伴います。
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