「原本が必要なのに写しを提出してしまった」「契約書の原本を紛失してトラブルに」など、書類管理での失敗は企業の信頼性を大きく損ないます。デジタル化が進む現在でも、原本と写しの適切な使い分けは重要な課題です。法的トラブルを避け、業務効率を向上させるための判断基準と実務ポイントを詳しく解説します。

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なぜ今「写し」と「原本」の違いが重要なのか
現代の企業環境では、書類管理の基本的な理解は企業の信頼性を大きく左右する要素となっています。特に「写し」と「原本」の適切な使い分けができていない企業では、取引先との信頼関係に亀裂が生じたり、法的なトラブルに発展したりするケースが後を絶ちません。
デジタル化が進む一方で、依然として紙の書類が重要な役割を果たしている現在、両者が混在する環境での使い分けの理解は不可欠です。電子契約が普及しても、公的機関への提出書類や金融機関との取り引きでは原本の提出を求められることが多く、適切な判断ができないと業務が停滞する原因となります。
実務担当者がつまずきやすいポイントとして、どの書類に原本が必要で、どの場面で写しで済むのかの判断基準が曖昧なことが挙げられます。特に中小企業では、書類管理の専門担当者がいないケースも多く、各部署の担当者が個別に判断することで統一性が失われがちです。また、社内での用語の統一ができておらず、部署間での認識のずれが生じているケースも多く見受けられます。
さらに、リモートワークの普及により、物理的な原本の管理がより複雑になっています。在宅勤務者が原本を必要とする場面で、どのように対応すべきかという新たな課題も生まれています。これらの問題を解決するためには、まず基本的な定義を正確に理解し、実務に即したルールを整備することが求められます。
そもそも「写し」と「原本」とは?―基本用語の正確な理解
原本とは、文書の作成者が署名や押印を行い、最初に作成した唯一の書類を指します。法的効力を持つ正式な文書として扱われ、その内容に対して作成者が責任を負う文書です。
原本には以下のような特徴があります。
- (書類によるが、)作成者本人の直筆署名または正式な押印があること
- 修正や変更の痕跡が明確に確認できること
- 文書の真正性が担保されていること
- そして法的証拠能力が最も高いこと
これらの要素により、原本は裁判などの法的手続きで重要な証拠として扱われます。
一方、写しとは原本を複製したものを指し、コピー機による複写やスキャナーによるデジタル化されたものも含まれます。写しは原本の内容を確認するために作成されますが、法的効力は原本より劣るのが一般的です。ただし、適切な手続きを経て作成された写しには、一定の証拠能力が認められる場合もあります。
「コピー」「複製」「デジタルデータ」との違いも整理しておくことが必要です。コピーは複写機を使用した物理的な複製を指し、複製はより広い概念で手書きでの転記も含みます。デジタルデータの場合、電子取引データとして作成されたものは電子的な原本となり、従来の紙の原本とは異なる扱いを受けます。
近年注目されているのが、認証付きの写しという概念です。公証人による認証や、企業の代表者による証明印が押印された写しは、通常の写しよりも高い証拠能力を持ちます。これらの区別を明確に理解することで、適切な書類管理が可能になり、業務効率の向上と法的リスクの回避につながります。
企業でよくある書類と「原本」「写し」の使い分け実例
契約書の取り扱い
契約書は両社が署名・押印した原本を作成し、それぞれが1通ずつ保管するのが基本です。甲乙2社の契約では、同一内容の契約書を2通作成し、両者が署名・押印を行い、各社が1通ずつ原本として保管します。
重要なのは、契約書の原本は厳重に保管し、日常業務での参照には必ず写しを使用することです。原本の紛失は企業にとって重大なリスクとなるため、金庫や専用の書庫での保管が推奨されます。また、契約内容の確認や社内での回覧には写しを使用し、原本への不要なアクセスを避けることが重要です。
請求書・領収書の扱い
請求書は発行側が原本を送付し、受領側は原本を受け取ります。会計処理では、受領した原本は証憑書類として保存が義務付けられており、写しでは税務上の要件を満たさない場合が多くあります。
領収書も同様で、支払いの証明として原本の保管が求められます。ただし、電子帳簿保存法の要件を満たすスキャン保存を行った場合は、原本を廃棄することが可能です。この場合、スキャン時の解像度やタイムスタンプの付与など、法的要件を満たす必要があります。
稟議書・申請書の社内文書
社内の稟議書や申請書では、承認者の押印がある文書が原本です。承認フローでは、各承認者は原本に直接押印し、最終承認後は原本を保管します。
近年、電子決裁システムの導入により、稟議書や申請書の電子化が進んでいます。この場合、システム上で作成・承認された電子文書が原本となり、印刷したものは写しとして扱われます。関係部署への配布は写しで行うのが一般的ですが、電子化されている場合はシステム上での共有が効率的です。
公的提出書類の要件
役所や外部機関への提出書類では、多くの場合原本の提出が求められます。ただし、近年は写しでの提出を認める機関も増えており、事前に提出先に確認することが重要です。
登記関係書類や許認可申請書類では、特に原本の要求が厳格です。これらの書類には、提出前に必ず要件を確認し、必要に応じて原本の作成準備を行う必要があります。また、提出後に原本が返却されない場合もあるため、重要な原本は事前に写しを作成しておくことが賢明です。
企業内で「写し」と「原本」を混同するとどうなるか
法的トラブルと信用失墜のリスク
契約書の写しを原本として扱った結果、契約の有効性が争われるケースがあります。特に裁判などの法的手続きでは、証拠能力の問題から企業側が不利な立場に置かれる可能性が高いです。
また、取引先から原本の提出を求められた際に写しを提出してしまうと、企業の信頼性に疑問を持たれ、今後の取引関係に悪影響を与えかねません。特に重要な商談や大型契約では、このような初歩的なミスは企業の管理体制に対する不信を招きます。
業務効率の低下と二度手間
提出先が原本を要求しているにもかかわらず写しを提出した場合、再提出を求められることになります。これにより、手続きが遅延し、業務スケジュールに支障をきたすだけでなく、担当者の工数も無駄になりかねません。
特に期限が設定されている手続きでは、遅延によるペナルティや機会損失のリスクもあります。許認可申請の遅延により事業開始が遅れたり、補助金申請の期限を逃したりするケースも発生しています。
内部統制の不備として指摘される可能性
書類管理の混乱は、内部統制の不備として監査で指摘される要因となります。上場企業では内部統制報告書の作成が義務付けられており、書類管理の不備は重要な欠陥として評価される可能性があります。
これにより、企業の信頼性や株価にも影響を与えかねません。また、金融機関からの融資審査や取引先との与信管理も、内部統制の状況は重要な評価項目となるため、適切な書類管理体制の構築は企業経営上の重要課題です。
実務で迷わないための判断基準とチェックポイント
原本提出が必要なケースの見極め方
以下の場合は原本の提出が必要となることが多くあります。
- 法的効力を要求される文書(契約書、保証書など)
- 公的機関への提出書類(許認可申請、登記関係など)
- 金融機関との取り引きに関する書類
- 税務関係の証憑書類、監査や検査で提示を求められる書類など
提出先から明確な指示がない場合は、事前に確認することを徹底しましょう。電話やメールで確認する際は、担当者の氏名と確認日時を記録しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
写しで済む業務と社内回覧での扱い
以下の場合は写しでの対応が可能です。
- 社内での情報共有や参照目的
- 検討資料としての使用
- バックアップとしての保管
- 一般的な業務連絡での添付など
社内回覧では、原本と写しを明確に区別し、回覧用には必ず写しを使用します。回覧資料には「写し」「コピー」などの表示を明記し、原本ではないことを明確にすることが重要です。
原本の保管年限と廃棄ルール
法令に基づく保存期間を正確に把握し、期間経過後の廃棄手続きを明確にしましょう。商法、会社法、税法などで定められた保存義務期間を遵守し、期間満了時の廃棄方法も適切に行う必要があります。
廃棄時には、機密情報の漏洩を防ぐため、適切なシュレッダー処理や専門サービスによる溶解処理を行うことが重要です。また、廃棄記録も適切に保管し、監査時に証明できるようにしておきましょう。
電子化における注意点
電子帳簿保存法の要件を満たすスキャニングを行う場合、解像度やファイル形式、タイムスタンプなどの技術的要件を遵守する必要があります。また、電子化後の原本廃棄も、法的要件を満たしているかを慎重に確認することが重要です。
電子化を進める際は、システムの導入だけでなく、運用ルールの整備や従業員への教育も併せて実施することで、効果的な書類管理体制を構築することができます。
社内ルール整備のすすめ―混乱を防ぐ書類管理マニュアルとは
社内用語の統一
まず、「原本」「写し」「コピー」「複製」などの用語定義を明確にし、全社で統一しましょう。用語集を作成し、新入社員研修や定期的な教育研修で周知徹底を図ることが重要です。
部署ごとに異なる呼び方をしている場合は、統一ルールを策定し、移行期間を設けて段階的に変更します。変更期間中は、新旧の用語を併記するなど、混乱を最小限に抑える工夫も必要です。
文書種別ごとの運用ルール策定
契約書、請求書、稟議書、申請書など、文書種別ごとに以下の項目を明確に定義します。
- 原本作成の責任者と承認フロー
- 原本の保管場所と管理方法
- 写しの作成タイミングと配布先
- 保存期間と廃棄手続き
- 電子化の可否と要件など
これらのルールは定期的に見直しを行い、法改正や業務変更に対応できるよう柔軟性を持たせることが重要です。
電子化を見据えた保管・廃棄フロー設計
デジタル化の進展を踏まえ、紙文書と電子文書の使い分けルールを策定します。電子契約システムの導入や電子帳簿保存法への対応を含め、電子の場合は電子取引データが原本になること、電帳法に従って紙の原本をスキャンした場合は原本を廃棄してもよいことなどを明確にし、将来的な完全電子化を見据えたフローを設計します。
実用的なルールブック作成のためには、誰でも迷わずに使えるよう、判断フローチャート、具体的な事例集、よくある質問と回答、担当者の連絡先、定期的な見直しと更新の仕組みなどの要素を含めることが重要です。これにより、担当者が変わっても一貫した書類管理が可能になり、企業全体のリスク管理向上につながります。
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