金融機関の書類は、会社法や法人税法、犯罪収益移転防止法など複数の法令によって保存期間が定められています。書類ごとに年数も起算日も異なるため、判断に迷う担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、主な根拠法令と保存期間の考え方を整理したうえで、保存期間中の効率的な管理方法から満了後の適切な廃棄方法まで、実務で押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。

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金融機関の書類の保存期間を正しく把握するべき理由
保存期間を定める法令は1つではない
金融機関が扱う伝票、契約書、取引記録、本人確認資料の保存期間は、「一律◯年」と決まっているわけではありません。会社法、税法、業法、マネー・ローンダリング対策の法令が、それぞれ別の目的から年数を定めているためです。根拠法令が違えば、必要な年数も起算日も変わります。書類ごとに根拠法令と起算日を一度ひも付けておけば、以後は迷わず判断できるでしょう。
早く捨てても、持ち続けてもリスクになる
保存期間の満了前に廃棄すると、保存義務違反になります。税務では、帳簿書類の保存が財務省令に従って行われていないことが、青色申告の承認取消事由の1つです。犯罪収益移転防止法でも、違反すれば是正命令を経て罰則の対象となりえます。一方、満了後も持ち続けると、紛失や漏えいが起きたときの被害が大きくなりかねません。金融分野の個人情報保護に関するガイドラインでも、個人データは利用目的に応じて保存期間を定め、期間を過ぎたら消去することとされています。検査や監査で問われるのは、保存から廃棄までを組織として管理できているかどうかです。
参照:法人税法 | e-Gov 法令検索
参照:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁
参照:犯罪による収益の移転防止に関する法律 | e-Gov 法令検索
参照:金融分野における個人情報保護に関するガイドライン|個人情報保護委員会
金融機関の書類の保存期間を定める主な法令
会社法・商法が求める10年
株式会社は、会計帳簿と事業に関する重要な資料を、帳簿の閉鎖時から10年間保存しなければなりません(会社法第432条第2項)。計算書類と附属明細書も、作成時から10年間の保存が必要です(同法第435条第4項)。会社以外の商人も、商法第19条第3項で同様に定められています。「事業に関する重要な資料」の範囲は条文に列挙されていないため、実務では重要な契約書まで含めて10年保存とするのが一般的です。
参照:会社法 | e-Gov 法令検索
参照:商法 | e-Gov 法令検索
法人税法が求める7年
法人は、帳簿と取引に関して作成・受領した書類を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。帳簿は総勘定元帳や仕訳帳、書類は棚卸表、貸借対照表、注文書、契約書、領収書などが該当します。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合などは10年間となるため注意しましょう(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)。
参照:法人税法 | e-Gov 法令検索
参照:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
犯罪収益移転防止法が求める7年
銀行や信用金庫、保険会社、金融商品取引業者などは犯罪収益移転防止法上の「特定事業者」(法第2条第2項)にあたり、取引時確認を行ったら直ちに確認記録を作成し、契約が終了した日などから7年間保存します(法第6条)。
特定業務に係る取引では、少額取引などを除き、取引の期日や内容などを記録した取引記録等を作成し、取引日から7年間保存する必要があります(法第7条)。同じ顧客の書類でも書類の種類によって起算日が異なるため、廃棄できる時期は一致しません。確認記録がある顧客との一定の取引では取引時確認を省略できますが、取引記録等の作成・保存義務は残る点に注意してください。
参照:犯罪による収益の移転防止に関する法律 | e-Gov 法令検索
参照:犯罪収益移転防止法 同施行令 同施行規則など|JAFIC 警察庁
業法上の帳簿書類は業態ごとに確認する
銀行、信用金庫、証券会社、保険会社は、それぞれの業法と関係府令の適用も受ける点を押さえておきましょう。例えば、第一種金融商品取引業者の場合、金融商品取引業等に関する内閣府令第157条に作成すべき帳簿書類が列挙されています。同条第2項では保存期間が5年・7年・10年に分かれ、起算日も「作成の日」「効力を失った日」「業務の終了の日」と書類ごとに異なります。解説記事や比較サイトの一覧表は改正が反映されていないこともあるため、最終確認は所管の法令そのもので行うことが大切です。社内規程に条文番号まで併記しておけば、改正時の見直しもスムーズになります。
参照:金融商品取引業等に関する内閣府令 | e-Gov 法令検索
参照:犯罪収益移転防止法の解説、パブリックコメント|JAFIC 警察庁
保存期間を判断するときの3つのポイント
複数の法令が重なるときは長いほうに合わせる
会計帳簿の保存期間は、会社法では10年、法人税法では7年と食い違います。どちらの義務も満たす必要があるため、長いほうの10年に合わせるのが基本です。短いほうを基準にすると、片方の法令に違反する状態が生まれてしまいます。
参照:会社法 | e-Gov 法令検索
参照:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
起算日の取り違えに注意する
法人税法上の帳簿書類は確定申告書の提出期限の翌日から、会社法上の会計帳簿は帳簿を閉鎖したときから期間を数えます。作成日や契約終了日、取引日を起算日とする規定もあり、起点を誤ると保存すべき書類を廃棄してしまうおそれがあります。書類一覧には必ず起算日の欄を設けましょう。保管箱に「◯年◯月以降廃棄可」と書いておくと、担当者が代わっても判断がぶれずに済みます。
参照:会社法 | e-Gov 法令検索
参照:犯罪による収益の移転防止に関する法律 | e-Gov 法令検索
参照:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
社内の文書管理規程を法令に合わせて見直す
法定の年数が変わらなくても、電子取引の増加や業務フローの変更で、規程が実態と合わなくなることがあります。書類名、根拠法令と条文、年数、起算日、保管場所、担当部署を1つの表にまとめておけば、異動があっても基準が引き継がれ、監査でもそのまま提示できます。
保存期間中の書類を効率よく管理する方法
アクセス頻度で保管場所を分ける
日常的に参照する書類と、期間満了を待つだけの書類を切り分け、後者は書庫や外部の保管施設へ移しましょう。それだけでも支店や事務室のスペースがまとまって空きます。基準は「直近1年間に取り出した実績があるか」程度で十分です。細かく分類しようとすると作業が止まりがちになるため、まずは二層に分けることを優先してください。
電子化できる書類と原本が必要な書類を分ける
国税関係帳簿書類を電子データで保存したり、紙の書類をスキャナ保存したりするには、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。登記手続きに使う印鑑証明書のように、原本の提出を求められる書類もあるでしょう。一方、電子取引で授受したデータは、電子データのまま保存することが義務付けられています。「電子化してよいもの」「原本を残すもの」「電子で保存すべきもの」に仕分けてから進めると安心です。要件を満たさないまま原本を処分すると、あとから証憑として使えなくなるため注意しましょう。
参照:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 | e-Gov 法令検索
参照:電子帳簿保存法関係|国税庁
外部保管サービスを活用する
自社で書庫を維持すると、賃料に加えて目録作成や出納管理にも人手がかかります。外部の書類保管サービスなら箱単位の保管料で済み、必要なときだけ取り出しを依頼できます。選ぶ際は、セキュリティ体制、取り出しにかかる日数、保管期限を管理する仕組みの有無を確認しておきたいところです。預ける前に箱の中身を書類単位で目録化しておけば、照会時に迷いません。顧客の個人データを含む書類を預ける場合、金融機関には委託先への必要かつ適切な監督が求められます。選定基準を定め、安全管理措置を委託契約に盛り込んでおきましょう。
参照:金融分野における個人情報保護に関するガイドライン|個人情報保護委員会
保存期間が満了した書類の廃棄方法
廃棄方法ごとの特徴を押さえる
社内のシュレッダーは手軽ですが、大量の書類には向きません。機密文書廃棄の溶解処理サービスは、事業者によっては箱ごと未開封で処理できるため、機密性の高い書類をまとめて処分したい場面に適しています。専門業者に委託すれば、回収から処理までを一貫して任せられます。委託先を選ぶ際は、プライバシーマークとISMSの認証取得状況に加え、運搬中の管理方法と立会いの可否も確認してください。回収から処理完了までの間に第三者が触れられない体制かどうかが、判断の分かれ目です。
廃棄証明書を受け取り、記録として残す
機密文書廃棄サービスでの廃棄後は事業者から廃棄証明書を受け取り、台帳に記録します。金融分野の個人情報保護に関するガイドラインでは個人データの「消去・廃棄段階における取扱規程」の整備が求められているため、廃棄の手順と記録方法を規程に明記しておくとよいでしょう。いつ、どの書類を、どの方法で処分したかが残っていれば、検査や監査でもそのまま説明できます。保存期間の確認と廃棄を年1回の定例作業にすれば、期限切れの書類が積み上がるのを防げます。
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