年末調整の書類は、提出が終わってしまえば意識から離れがちです。ところが扶養控除等申告書をはじめとする各種申告書は税務署へ送るものではなく、7年間にわたって会社の手もとで保管する義務があります。この記事では、年末調整書類の保管期間の根拠、年度別の期限、書類ごとに異なる保管ルール、マイナンバーを含む書類の管理方法、期間経過後の安全な廃棄手順までをまとめて解説します。
年末調整書類の保管期間は原則7年
年末調整書類の保管期間の根拠となる法令
年末調整で従業員から集める各種申告書は、所得税法施行規則第76条の3などにより、給与支払者(源泉徴収義務者)に保管義務が課されています。国税庁の案内でも、税務署長から提出を求められない限り実際に税務署へ送付することはなく、会社が手もとで保存する書類とされています。「提出したから手もとにない」という思い込みが、紛失や誤廃棄を招くケースもあります。
出典:No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間|国税庁
起算日は「提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日」
法令上の保管期間は、申告書等の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間と定められています。起算日は従業員からの受取日や決算期末と誤解されがちですが、あくまで提出期限を基準に、翌年1月10日の翌日から数えます。
令和◯年分はいつまで保管?年度別一覧
起算日の考え方を当てはめると、保管期限は「その年分の西暦に8を足した年の1月10日」と覚えられます。
| 対象年度 | 保管期限 |
|---|---|
| 令和元年分(2019年分) | 令和9年(2027年)1月10日 |
| 令和2年分(2020年分) | 令和10年(2028年)1月10日 |
| 令和3年分(2021年分) | 令和11年(2029年)1月10日 |
| 令和4年分(2022年分) | 令和12年(2030年)1月10日 |
| 令和5年分(2023年分) | 令和13年(2031年)1月10日 |
| 令和6年分(2024年分) | 令和14年(2032年)1月10日 |
| 令和7年分(2025年分) | 令和15年(2033年)1月10日 |
| 令和8年分(2026年分) | 令和16年(2034年)1月10日 |
年末調整書類の種類ごとに保管期間を確認する
7年保管が必要な年末調整書類
国税庁が源泉徴収義務者の保管対象として挙げているのは、主に次の書類です。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 退職所得の受給に関する申告書
- 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
- 給与所得者の特定親族特別控除申告書(令和7年分の年末調整から)
源泉徴収簿は国税庁の様式があるものの、作成自体は法令上の義務ではありません。実務では他の書類と同じく7年保管が一般的で、賃金台帳を兼ねる場合は労働基準法も適用されます。
出典:No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間|国税庁
根拠法が異なる年末調整書類に注意
給与まわりの書類は、税法だけで動いているわけではありません。同じキャビネットに並んでいても、根拠法が違えば年数も起算日も変わります。
| 書類 | 保管期間 | 起算日 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|
| 賃金台帳 | 5年(3年でも可) | 最後の記入をした日 | 労働基準法第109条・第143条、同法施行規則第56条 |
| 健康保険に関する書類 | 2年 | 完結の日 | 健康保険法施行規則第34条 |
| 厚生年金保険に関する書類 | 2年 | 完結の日 | 厚生年金保険法施行規則第28条 |
| 雇用保険に関する書類 | 2年(被保険者に関する書類は4年) | 完結の日 | 雇用保険法施行規則第143条 |
なお賃金台帳と「賃金その他労働関係に関する重要な書類」(タイムカードなど)は、記録に係る賃金の支払期日が最後の記入日または完結の日よりあとになる場合、その支払期日が起算日になります(労働基準法施行規則第56条第2項)。賃金台帳は令和2年4月の改正で5年に延長されましたが、労働基準法第143条の経過措置により当面は3年で足ります。終了時期は未定のため、5年保管を前提に体制を整えておくと切り替え時に慌てずに済むでしょう。
出典:労働基準法|e-Gov 法令検索
出典:健康保険法施行規則|e-Gov 法令検索
出典:厚生年金保険法施行規則|e-Gov 法令検索
出典:雇用保険法施行規則|e-Gov 法令検索
保管期間に迷ったときは長いほうに合わせる
源泉徴収簿と賃金台帳を兼用しているケースなど、1枚の書類に複数の法令が関わるときは、長いほうの7年保管に統一することを推奨します。賃金台帳の保管義務を満たしながら、税務調査で年末調整の根拠を求められた場面にも備えられます。書類ごとに保管期間を変えると、担当者の交代時にルールが破綻することが多いため、注意が必要です。社内規程で「最長期間に揃える」と一律に定めるほうが、運用は安定するでしょう。
保管期間中の年末調整書類を安全に管理する方法
マイナンバーを含む年末調整書類に必要な管理措置
扶養控除等申告書にはマイナンバーが記載され、扶養親族の氏名や生年月日も並びます。特定個人情報として、通常の社内書類より一段高い管理が求められる領域です。実務でそろえたいのは次の3点です。
- 保管場所の管理:施錠できるキャビネットや書庫に保管し、事務取扱担当者以外が容易に閲覧できない配置にする
- 体制の明確化:責任者と事務取扱担当者を定めて役割を明文化し、取扱いのルールを社内規程に落とし込む
- 取扱状況の記録:書類の持ち運びや廃棄の記録を残し、所在を追跡できるようにする
なお、従業員100人以下の中小規模事業者には簡略化された対応方法が別途示されており、自社の規模に応じて無理のない範囲で整えれば問題ありません。
出典:特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)|個人情報保護委員会
保管場所の選択肢|社内保管・外部保管・電子化
保管先は大きく3通りにわかれ、従業員規模と閲覧頻度によって最適解が変わります。
| 方法 | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 社内保管 | すぐ取り出せる/追加コストが小さい | スペースを占有する/管理責任が社内に集中 | 従業員数十名規模、書類量が少ない |
| 外部保管サービス | 省スペース/セキュリティ環境が整う | 取り出しに時間と費用がかかる | 7年分が段ボール数箱を超える |
| 電子化 | 検索性が高い/物理スペースが不要 | 要件確認と初期作業の負担 | 新年度から運用を切り替えたい |
電子保管に切り替える場合の確認事項
年末調整書類の電子化には、最初から電子データで受け取る方法と、紙の書類をスキャンして保管する方法があります。求められる要件が違うため、両者は区別して考えてください。前者は国税庁の手順に従い、データのまま保管します。令和3年4月1日以降は税務署への承認申請が不要となり、保存期間は書面と同じ7年です。後者で紙の原本を廃棄できるかは電子帳簿保存法のスキャナ保存要件に関わり、対象範囲の判断がわかれるため、事前に所轄税務署へ確認しておくと確実でしょう。
出典:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁
出典:スキャナ保存関係|国税庁
7年分の年末調整書類が社内を圧迫したときの考え方
直近1〜2年分より古い書類は閲覧の機会がほとんどなく、オフィスに常駐させる必要性は高くありません。社内保管の床面積コストと外部保管費用を比べると、段ボール数箱程度から外部委託のほうが安くなるケースもあります。古い年度分を社外へ移し、直近分だけを手もとに残す運用は、省スペースと安全性の両立に有効です。
保管期間が過ぎた年末調整書類の正しい廃棄方法
マイナンバーは期間経過後「速やかに廃棄」が必要
マイナンバーには保管だけでなく廃棄の義務も課されており、所得税法施行規則第76条の3の保管期間を過ぎた申告書は、原則として速やかに廃棄しなければなりません。期間経過後の廃棄を前提とした体制で保管しておきたいところです。つまり「7年経ったら捨てる」ではなく「捨てる前提で7年しまう」が本来の姿勢になります。「念のため残す」判断は漏洩リスクと管理コストを増やすため、期間を過ぎた書類は放置せず処分しましょう。
出典:特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)|個人情報保護委員会
出典:所得税法施行規則|e-Gov 法令検索
廃棄方法の比較|社内シュレッダー・溶解処理・廃棄サービス
特定個人情報が記載された書類の廃棄方法としては、焼却や溶解、復元できない程度に細断できるシュレッダーの利用などが挙げられます。共通するのは「復元できない状態にする」という一点です。
| 方法 | 処理量 | 安全性 | 手間 | コスト感 |
|---|---|---|---|---|
| 社内シュレッダー | 少量向き | 裁断幅に依存 | 大きい | 機器代・電気代 |
| 溶解処理 | 大量向き | 復元不可 | 小さい | 箱単位の従量制 |
| 廃棄サービスへ委託 | 大量向き | 高い | 小さい | 回収・処理費 |
7年分ともなると量が多く、市販のシュレッダーでの処理は日数や放置リスクの面で困難です。一度に大量処分するなら、溶解処理や廃棄サービスへの委託が現実的でしょう。
機密文書廃棄サービスを選ぶときの5つの基準
委託先を選ぶときは、価格より先に次の5点を確認しましょう。
- 回収から処分までを追跡できるか:どの段階で誰が扱うのか、工程が明示されているか
- 第三者認証の有無:プライバシーマークやISMSなど、情報管理体制の客観的な裏づけがあるか
- 証明書の発行:溶解証明書や裁断証明書が発行され、処分完了を書面で確認できるか
- 回収時の安全性:施錠可能な回収ボックスや専用車両を用いているか
- 作業員の教育体制:機密文書の取り扱いは継続的な研修が行われているか
特に3つ目の証明書は、社内への説明責任を果たすうえで欠かせません。委託後も管理責任は自社に残るため、処分完了の記録まで確認してはじめて管理が完結すると捉えてください。
退職者の年末調整書類はどう扱う?
従業員が退職したあとも、その年の年末調整書類の保管義務(提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間)は続きます。効率よく管理・廃棄するため、退職者の書類は在職者とファイルを分け、年分ごとにまとめておくのがオススメです。あわせて退職者名簿と保管箱の対応表を作っておくと、本人から源泉徴収票の再発行を求められた際もスムーズに動けます。
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